エジプト神話の知恵の神。男神。配偶神はセシャト。トトというのはギリシア読みで、原語ではジェフティとよばれ、エジプト象形文字ではしばしば同じ音をもつイビス鳥(「朱鷺(とき)」の一種)で示される。神像としては、頭上に新月と円盤、手に書板と筆を持つ、イビス鳥の頭の人身や、犬頭人身などの姿で表され、『死者の書』ではオシリスの前でヒヒの姿となって死者の生前の魂の善悪を記録している。トトの起源は、神像に伴う新月が示すようにおそらく月神と思われ、ここから月日の計算、すなわち計測の神、さらには知識一般の神と考えられるようになったと推察される。のちにギリシア人は、この神を同じ知識の神であるヘルメスと同一視し、トト神崇拝の中心地である南エジプトのフムン(エスネ)をヘルモポリスとよんだ。トト(ヘルメス)信仰はエジプト全土に及んだ。
[矢島文夫]
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