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金管楽器の一種。管全体のうちで円筒管部分の占める比重が大きく,音は張りがあって輝かしい。またこの名は俗にいうらっぱの類の代表ともされるほど有名で,それら全体の総称に用いたり,円筒管系のらっぱの総称に用いたりすることさえある。語源はギリシア語のストロンボス(貝殻)らしいが,実際の祖はイスラム世界の楽器ナフィールであり,中世にヨーロッパに入ったと考えられる。元来は,一定の長さの管から得られる自然倍音列の諸音を,唇と呼気の調節だけで吹き分ける楽器であったが,その技術は非常に高度化し,バロック音楽の時代には,基音に対して4オクターブ前後も離れている高次倍音を自在に駆使した流麗な演奏も行われた。その片鱗はJ.S.バッハの諸作などからもうかがわれる。しかし,1系列の倍音だけでは,いかに名技で補うにせよ,音が不足である。そこで,管の一部をスライドにしたり,木管楽器のように管壁に小孔をあけたりして管長に変化を与え,音の種類を増やそうとしたこともある。今日では三つの弁がつけてあり,左手で操作すると本管と迂回管が連絡して管長が段階的に延長され,7系列もの倍音を使えるようにしてある。歌口(マウスピース)は,内面の形が盃状のものを用いる。使い勝手の関係から全体を長円形に巻いて作るが,まっすぐに作ったものもあり,後者は祭典のファンファーレ等で喜ばれる。弁操作なしで鳴らした音によって基調が決まるが,管長1.3mほどで変ロ調のものと,それよりやや短いハ調のものが代表的である。ハ調のもの以外は移調楽器として扱われる。現代型楽器で常用される倍音は基音の3オクターブ上くらいまでであるが,管長を昔の半分にしてある(基音が昔よりオクターブ高い)ので,実音は昔と変わらない。弁のおかげで音の不足は解決しているし,吹き分けのむずかしい高次倍音をあまり使わずにすむので演奏の安定がよい。高音楽器として吹奏楽,軍楽,金管合奏等の中核をなすほか,管弦楽や各種のバンドなど活躍の場が広い。なお第1次世界大戦後のジャズにおいて,この楽器の名手が輩出し,まったく独自の発想で楽器を使いこなして,他分野にも多くの影響を与えたことは特筆に値する。
執筆者:中山 冨士雄+関根 裕
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リップリード(唇を発音源とする)の気鳴楽器の一つ。ホルンボステルとザックスの楽器分類法においては「トランペット」をリップリードの気鳴楽器の総称として用いているが、現在一般には管弦楽や吹奏楽、ジャズなどで用いられる金管楽器の代表的なものをさす。
トランペットの語源はギリシア語で貝殻の一種をさすstrombosとされている。貝殻をはじめ木、竹、樹皮などを材質とした円筒形のリップリード楽器は世界各地に分布しており、この種の原始的トランペットは管の一端に吹き口が設けられているものが多いが、一端が閉じていて管の横に吹き口をあけたタイプも少なくない。しかし、現在一般にいうトランペットの直接の祖は、13世紀以降イスラム圏からヨーロッパに伝来したナフィールnafīlである。これは金属性の長い円筒状直管に朝顔管のついたリップ・リード楽器で、やがて長い円筒状管を基本とし、管をS字などに曲げたものに変形されていった。16~18世紀はこの種の長管自然トランペットの全盛期である。これは変音装置がなく、自然倍音を唇と呼気で調節するものであった。そこで、よりたやすく音の選択の幅を広げるためにはさまざまな管長の替え管を必要とした。この不便さを解消するためにスライド式にしたり、管に音孔をあけたものがつくられたが、音質の点で難があり、結局19世紀初頭に変音弁(バルブ)付きのものが実用化されるに至る。しかし、当初は長管にバルブが装置されたため、高音の運指が複雑化してしまい、より簡単なコルネットのほうがトランペットよりも広く用いられた。19世紀末により機動性を高めるべく、コルネットをモデルとして管の短いものに改良され、ほぼ今日の形となった。
今日では三つのバルブがつけられ、右手の操作によって管長が段階的に変えられて7系列の倍音が出せるようになっている。B♭管、C管、E♭管がもっとも一般的で、そのほかに小形で1オクターブ高いB♭管(ピッコロ・トランペット)や、管を巻かずにまっすぐにつくったアイーダ・トランペット(ベルディのオペラ『アイーダ』の凱旋(がいせん)のシーンで舞台において演奏される)などもある。
[卜田隆嗣]
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…管の中の空気(空気柱)に外部から気流(ふつうは奏者の呼気)を作用させて楽音を作る楽器の総称。気流の作用を受ける方式には,(1)管壁に小孔をあけ,側縁に気流を当てる(フルート),(2)管の入口に振動体をしかける(オーボエ,クラリネット),(3)管の入口に唇を当て,振動体として機能させる(トランペット)がある。(2)の場合の振動体は,適当な弾力のあるリードと呼ばれる薄片で,シングル・リード,ダブル・リードなどの別がある。…
※「トランペット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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