中生代に栄えた特徴的な二枚貝の1属でサンカクガイ科Trigoniidaeを代表する。分類学的にはこの属名は殻の前中部に強い共心円肋,後部に強い放射肋をもつ種に限定して使われるが,一般には広くサンカクガイ類全体をトリゴニアと呼ぶ。サンカクガイ類は多数の属から構成され,殻の外形や表面の彫刻は変化に富むが,ちょうつがいの部分の構造はほとんど一定していて,ぎざぎざの条線のついた2本の強い主歯が右殻にあり,左殻にはこれに対応する歯槽があることで特徴づけられる。内面には真珠層がよく発達する。通常は殻頂から後腹縁にかけて強い背稜が走り,その前方の部分(ディスク)と後方の部分(エリア)で対照的に彫刻を異にする。本科は二畳紀,三畳紀に栄えたミオフォリアMyophoria類から多元的に由来したと考えられ,三畳紀後半から白亜紀末まで,極地方を除く世界各地の浅海堆積物に多くの種が知られ,日本でも各地の三角貝砂岩層から約100種が記載されている。種の生存期間はやや長いものが多いが,形態が派手で変化に富むため,地域内での対比や中生代の生物地理区・古環境の推定,表面彫刻の機能的意味を考察するうえに有効な分類群である。新生代に入ると急速に衰退して,わずかにオーストラリアに第三紀のエオトリゴニアEotrigonia,現生のシンサンカクガイ(ネオトリゴニアNeotrigonia)数種のみが知られ,“生きている化石”の一例とされている。
執筆者:速水 格
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軟体動物門二枚貝綱トリゴニア科の代表属。一般には本科の類全般をさす。殻は三角形で厚く、内層は真珠層からなる。その殻の外形からサンカクガイ(三角貝)とも称する。右殻に放射状の特徴的な歯をもつ。殻表面は三つの部分に分けられ、各部に強い肋(ろく)(線状の高まり)やいぼが発達することが多い。中生代三畳紀中期に出現し、中生代全般に栄えた。狭義のトリゴニア属はジュラ紀のものに限られる。
南オーストラリアの海岸に生息するネオトリゴニアNeotrigonia(シンサンカクガイ)は唯一の現生属で、遺存種の好例である。現生種との比較や化石の産状からみて、化石種の多くは暖かい外洋に面した浅海砂底に潜って生活していたと思われる。分布が広く、属の生存期間も短いので、中生代の重要な標準化石の一つである。日本の海成白亜系からも、スタインマネラSteinmanellaなど数多くの属種が産する。
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「サンカクガイ(三角貝)」のページをご覧ください。
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