改訂新版 世界大百科事典 「ドイツ連邦銀行」の意味・わかりやすい解説
ドイツ連邦銀行 (ドイツれんぽうぎんこう)
Deutsch Bundesbank
ドイツの中央銀行。ブンデスバンクとも呼ばれる。本店はフランクフルト・アム・マインに所在。旧西ドイツでは1948年から57年まで,各州ごとに法的に独立した州中央銀行Landeszentralbankが通貨政策と信用政策を行い,その頂点に銀行券発行を行うレンダーバンクBank deutscher Länder(フランクフルト・アム・マイン)があるという二重機構が採られていた。この中央銀行制度は,当時の連合国当局の意向を反映して,極端なまでの地方分権と政府からの完全な独立を特色としていた。しかし,このような連合国の意向による中央銀行制度を改組しようとする動きは早くからあった。とくに大商業銀行が全国的に業務を活発化させるとともに,地方分権的な銀行制度の欠点が明らかになった。この結果,それまでの中央銀行の独立性をいかに守るかという問題をめぐり対立していた金融当局者も,集中的な機構の必要性について同意するようになり,57年8月〈ドイツ連邦銀行に関する法律〉が発効し,単一の中央銀行としてのドイツ連邦銀行が発足した。90年のドイツ統一後は旧東ドイツ地域も含む全ドイツの中央銀行となった。ドイツ連邦銀行はドイツにおける銀行券の独占的発行権を有し,割引利率の変更,公開市場操作,支払準備率の変更などの金融政策を実行する。また通貨価値の維持がその最高の義務となっている。総裁と役員会の構成員は連邦政府の推薦に基づき,大統領が任命することになっているが,政府からの独立性は法律によって保証されている。
執筆者:伊藤 正憲
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