3世紀半ばごろのキリスト教の聖人でパリ初代司教。ラテン名ディオニュシウスDionysius。生没年不詳。Denysともつづる。〈聖人〉を意味する〈サンSaint〉を付してサン・ドニと呼ぶことも多い。フランスの守護聖人ならびに14救難聖人の一人。頭痛,狂犬病を治癒すると信じられる。《使徒行伝》が伝えているアテナイの裁判官ディオニュシウス・アレオパギタと同一視されることもある。伝説によれば,キリスト教布教のためにローマ司教ファビアヌスFabianus(在位236-250)によりガリアへ派遣されたが,異教徒により2人の聖人,リュスティク(ルスティクス)とエリュテール(エレウテリウス)とともに斬首されて殉教した。また別の伝説では,モンマルトル(〈殉教者の丘〉の意味)で斬首された後,みずからの首を抱えてパリ北方の一寒村(現在のサン・ドニともいわれる)まで運んだという。
美術作品では,首を抱えた司教の姿で表され,彼の伝説から,牢獄でキリストから最後の聖体を受ける場面や斬首される場面などが多く表される(ベルショーズH.Bellechose《ドニの殉教》,1416,ルーブル美術館など)。祝日は10月9日。
→サン・ドニ修道院
執筆者:篠 雅広
フランスの画家,美術理論家。ナビ派の中心人物の一人。グランビル生れ。アカデミー・ジュリアン在学中の1888年,セリュジエを通じて知ったゴーギャンの〈総合主義synthétisme〉に強く影響され,〈照応correspondance〉に基づいた象徴主義理論を展開。主題とは無関係の絵画それ自身の自立性を主張する一方で,アール・ヌーボー風の曲線と,淡く甘美な色面を調和させた作風により多方面で世俗的な成功をおさめる。宗教芸術の復興にも力を注ぎ,1919年,ルオーらとパリに〈宗教芸術学校〉を開設,みずからも伝統的な宗教画の制作に専念するが,これは当初の革新的な理論とは奇妙な対照をなしている。1914年以来ドニが居を構えたサン・ジェルマン・アン・レーに,80年,主要作品を収蔵する美術館が開設された。
執筆者:本江 邦夫
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フランスの画家。グランビルに生まれる。17歳のときからアカデミー・ジュリアンに、ついでエコール・デ・ボザールに学ぶ。1890年サロンに初出品。ポンタバンのゴーギャンの教訓を得たセリュジエを中心とする「ナビ派」の結成に参加。ドニは年少であったが、やがてこのグループの指導的な存在として、90年、現代絵画の基本的路線となる理論「一枚の絵とは、軍馬や裸婦やなんらかの逸話である以前に、本質的に、ある秩序で配置された色彩が覆う平坦(へいたん)な面であることを想起しよう」を宣言(『アール・エ・クリティック』誌)。簡略化された形態、アール・ヌーボー風の曲線の体系、穏和な色彩、理想主義的な主題が、90年代から20世紀初頭の彼の作品を特徴づけている。1912年シャンゼリゼ劇場の天井画を描くが、翌年ごろから宗教画に専念し、19年にはデバリエールとアール・サクレ工房を設立している。多くの装飾壁画、挿絵を手がけ、『絵画理論』(1912)、『宗教美術史』(1939)などの著作もある。その他の代表作に『セザンヌ礼賛』(1900・パリ国立近代美術館)。サン・ジェルマン・アン・レーに没。
[中山公男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…パリ北郊にある修道院。273年にモンマルトルで殉死したドニ(使徒パウロの弟子ディオニュシウス・アレオパギタともいわれる)が,みずからの首を抱えて約10km歩き,倒れた場所に築かれたという墓をめぐって創設された。墓の周辺に形成された崇敬団に対し,まず聖ジュヌビエーブが修道院を建設し(5世紀末),ついでダゴベルト王が教会堂を再建した(7世紀初)。…
…市の南北周辺はゆるい丘陵地となり,ビュット・ショーモン,ビュット・モンマルトル,ビュット・シャイヨー,モン・パリ,モンパルナスなどの丘がある。
【市街】
パリ市街は1859年まで1~12区の約15km2にすぎず,13~20区は郊外にあったが,現在はその全区域に加えて,パリ近郊3県のオー・ド・セーヌ,セーヌ・サン・ドニ,バル・ド・マルヌが,完全に市街地化して連なっている。近郊は幅約10kmの内帯をなし,面積355km2,人口293万(1982)を擁して,パリと一体化している。…
…カトリック精神および象徴主義の色彩が強い,フランス19世紀末の画家グループ。1888年,パリのアカデミー・ジュリアンの画学生であったドニ,セリュジエを中心に形成された。〈預言者〉を意味するヘブライ語nāḇî’にちなんだグループ名はセリュジエの命名になる。…
※「ドニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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