改訂新版 世界大百科事典 「ニキアス」の意味・わかりやすい解説
ニキアス
Nikias
生没年:?-前413
古代アテナイの軍人,政治家。鉱山奴隷1000名を賃貸して商工業経営に関与するなど,ペリクレス以後に台頭した新しいタイプの政治家の一人。前427年将軍に選出されてメガラ領ミノア島を占領,翌年聖島デロスの清めを行った。前425年スパルタ軍をピュロス湾内のスファクテリア島に包囲したが,勝利を決定できないまま政敵クレオンの痛烈な批判を許し,彼に指揮権を譲って名を成さしめた。クレオンの死後,前421年にスパルタとの間に五十年和約(いわゆる〈ニキアスの平和〉)を締結したのもつかのま,アルキビアデス一派の西方拡大政策に引きずられて前415年,不本意ながら将軍の一人としてシチリア遠征に参加した。前413年,形勢不利が確実になってもアテナイ民会を恐れて撤退をためらい,さらに撤退日が決まってもその前夜の皆既月食に動転して機会を失い,残兵とともに投降ののち,シラクサで処刑された。
執筆者:馬場 恵二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報