ニッケル-カドミウム電池(読み)ニッケルカドミウムデンチ

化学辞典 第2版 の解説

ニッケル-カドミウム電池
ニッケルカドミウムデンチ
nickel cadmium battery

ニッカド(Ni-Cd)電池ともいう.カドミウムを負極活物質,水酸化酸化ニッケルNiO(OH)を正極活物質,水酸化カリウム水溶液を電解液とする二次電池である.充電することにより,繰り返し使用が可能である.構成は,

(-)Cd|KOH(LiOH添加)|NiO(OH)(+)

で,電池反応は次式で示される.右方向の反応は放電,左方向は充電である.

 負極:Cd + 2OH

Cd(OH)2 + 2e(E1° = -0.810 V) 

 正極:2NiO(OH) + 2H2O + 2e

2Ni(OH)2 + 2OH(E2° = 0.490 V) 

 全電池反応:Cd + 2NiO(OH) + 2H2O

Cd(OH)2 + 2Ni(OH)2 

(E ° = E2° - E1° = 1.30 V) 

公称電圧1.2 V.容量は,開放型では最大1000 Ah と大きいので,モーターなどの大出力用途に適しており,人工衛星,列車,船舶,航空機の蓄電,ディーゼルエンジンの始動電算機,電話システム予備電源などとして賞用されている.しかし,一般に流通している円筒型ニッケル-カドミウム電池の電圧は,同形状の一次電池(マンガン乾電池,アルカリ乾電池)の定格1.5 V より低いため使用しにくい面もある.さらに,電池を構成するカドミウムは有害なので,廃棄時に環境への影響を考慮する必要がある.[別用語参照]ニッケル-水素電池

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 の解説

ニッケル-カドミウム電池 (ニッケルカドミウムでんち)
nickel-cadmium cell

陽極活物質に酸化水酸化ニッケルNiO(OH),陰極活物質にカドミウムCd,電解液に水酸化カリウムKOHを用いた蓄電池で,代表的なアルカリ電池である。充放電の反応は,

で,全反応は,

である。

 極板の形式からユングナー型(ユングナー電池)と焼結型(焼結式蓄電池)に分かれる。ユングナー型極板は,ニッケルめっきした孔あき鋼板製チューブまたはポケットに活物質を充てんし,加圧成形してつくられる。焼結型極板は,カルボニルニッケルを焼結してつくった多孔質基板中に,陰極の場合にはカドミウムを活物質として充てんし,陽極の場合にはNiO(OH)を活物質として充てんしたものである。ニッケル-カドミウム電池は,鉛蓄電池にくらべ,価格は高いが,サイクル寿命が長く,保守が容易であるなどの特徴を有している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ニッケル-カドミウム電池
ニッケルカドミウムでんち
nickel cadmium battery

陽極に水酸化ニッケル,陰極にカドミウムを用いた水酸化カリウム溶液を電解液とするアルカリ蓄電池で,定格電圧は 1.2V。 1899年 V.ユングナーにより発明されたのでユングナー電池ともいう。鉛蓄電池に比べて軽量振動に耐え,過充電が可能であり,過放電しても故障がないなど,多くの長所をもつ。また,焼結式電極などを用いて完全密閉にしたものが充電可能な小型電池としてポータブル電動工具,玩具,安全灯などの電源に使われているが,公害対策のため,先進国では陰極を水素吸蔵合金に置き換えたニッケル-水素電池へ移行しつつある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のニッケル-カドミウム電池の言及

【アルカリ蓄電池】より

…陽極および陰極の起電反応,標準単極電位は表2のとおりで,アルカリ蓄電池の起電力はほぼ両極の標準単極電位の差になる。 これらのうちで最も広く用いられているのはニッケル‐カドミウム電池であり,通常アルカリ蓄電池といえばこの電池を指す。これはさらに電極のつくり方の違いにより,ユングナー電池と焼結式電池に分類される。…

※「ニッケル-カドミウム電池」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android