ヌマガレイ(読み)ぬまがれい(その他表記)starry flounder

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌマガレイ」の意味・わかりやすい解説

ヌマガレイ
ぬまがれい / 沼鰈
starry flounder
[学] Platichthys stellatus

硬骨魚綱カレイ目カレイ科に属する海水魚。本州の中部地方以北、オホーツク海、ベーリング海を経てカリフォルニアに広く分布する。ほかのカレイ類と違って、目が体の左側(背側を上に、腹側を下にして見た場合)にあり、ヒラメ型である。しかし、カリフォルニア産のものはすべて右側に目をもち、カレイ型である。またアラスカ沿岸のものは目の位置は左右半々であるが、日本に近づくにつれて、しだいにヒラメ型が多くなる。なお、ヌマガレイの視神経交差はカレイ型であるので、目の位置は右が通常、ヒラメ型の左は異常とされる。日本産とアメリカ産のヌマガレイの交雑によって、この現象は遺伝によって支配されていることが実証された。体は高い菱(ひし)形で、その表面に多数の粗雑な骨質突起が散在する。体は暗緑色で、背びれ、臀(しり)びれおよび尾びれ黒色の条紋がある。

 沿岸および海岸近くの湖沼河川の中流域に生息するため、カワガレイ別名がある。おもに多毛類、小形の甲殻類などを食べる。産卵は2、3月ごろ沿岸の浅所で行う。体長90センチメートルぐらいになる。おもに底刺網(そこさしあみ)、釣り、定置網などで漁獲される。肉は柔らかくて水っぽい。

 北海道では留萌(るもい)、忍路湾(おしょろわん)および知内(しりうち)など、また宮城県松島湾、金華山(きんかさん)、秋田県八郎潟(はちろうがた)、新潟県などから知られているオショロガレイは、本種とイシガレイ雑種であることが判明した。産卵期と産卵場所が重複するために雑種が生じると考えられる。

[尼岡邦夫]


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改訂新版 世界大百科事典 「ヌマガレイ」の意味・わかりやすい解説

ヌマガレイ (沼鰈)
starry flounder
Platichthys stellatus

カレイ目カレイ科の魚。北太平洋岸一帯に広く分布する北方種であり,日本では北海道および本州北部に見られる。南限地は,太平洋側では霞ヶ浦,日本海側では小浜である。北海道でカワガレイともいわれている。尾部にわずかな埋没したうろこを有するのみである。体表には数多くの小さな瘤状の隆起体が散在している。側線がよく発達している。有眼側は蒼緑色で,無眼側は淡黄色を呈する。各ひれとも黄色みを帯びており,背,しりびれの両方に明りょうな4~7条の黒色横帯が見られ,尾びれには,3~4条の黒色縦走帯が認められる。産卵期は,北海道西部において2~3月ころである。海に面した潟湖あるいは河口付近の汽水域によく見られ,ときにはかなり上流にまで生息していることもある。カレイ類は一般に体の右側に眼があるのがふつうであるが,ヌマガレイでは左に眼のあるものも多く,その逆転の割合が地域によって大きく異なる種類として有名である。ヨーロッパ産のものは水域により5~36%であるが,北太平洋産のものは逆転率がもっと高く,日本産では100%左側に眼がある。あまり美味でない。体長は37cmを超えるものもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヌマガレイ」の意味・わかりやすい解説

ヌマガレイ
Platichthys stellatus; starry flounder

カレイ目カレイ科の魚。体長 30cm内外。体は菱形で体高が高い。口は小さく,下顎が上顎よりも長い。側線に鱗がない。日本近海産のものは他のカレイと異なり,眼が体の左側にある。有眼側の体色は暗灰色で,背鰭および尻鰭に5本内外の黒帯がある。河口をさかのぼることがあり,カワガレイともいう。北日本,朝鮮,アラスカ,北アメリカに分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のヌマガレイの言及

【カレイ(鰈)】より

…さらに軀幹(くかん)部(鰓孔(えらあな)の後端から肛門まで)が非常に短く,体のまわりを発達した背びれとしりびれが取り囲んでいる。俗に左ヒラメの右カレイといわれるように,通常,体の右側に眼のある魚がカレイで,左側に眼のあるものがヒラメとされているが,例えば日本産のヌマガレイは,ほとんどが左側に眼をもち,この定義は厳密ではない。一般にカレイ科の魚のほうが口が小さく,歯の発達も悪い傾向がある。…

※「ヌマガレイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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