ヌートリア(英語表記)nutria
coypu
Myocastor coypus

デジタル大辞泉 「ヌートリア」の意味・読み・例文・類語

ヌートリア(nutria)

齧歯げっし目カプロミス科の哺乳類。体長40~60センチ、尾長20~40センチ。体つきビーバーに、尾はネズミに似て、後ろ足水かきをもち、水辺にすむ。草食性南アメリカに分布し、日本では軍用毛皮獣として輸入されたものが野生化。海狸かいりねずみ。沼狸しょうり

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精選版 日本国語大辞典 「ヌートリア」の意味・読み・例文・類語

ヌートリア

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] nutria は、元来スペイン語でカワウソの意。南米に移民したスペイン人がカワウソと見誤ったことによる ) 齧歯目ヌートリア科の哺乳類。体長四五~六五センチメートル、尾長二五~四〇センチメートル。形はビーバー、ネズミに似ており、あしに水かきをもつ。体毛は柔らかくて長く、体の上面は褐色ないし黒色を呈する。南アメリカに分布し、川岸や水上に巣をつくってすみ、夜間水草などを食べる。毛皮は良質で、肉は食用になる。日本でも毛皮用に養殖されたこともあり、岡山県などで野生化している。かいりねずみ(海狸鼠)。

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改訂新版 世界大百科事典 「ヌートリア」の意味・わかりやすい解説

ヌートリア
nutria
coypu
Myocastor coypus

一見ビーバーに似た大型の齧歯(げつし)類で,チンチラテンジクネズミなどに近縁のカプロミス科に属する。ブラジル南部からアルゼンチン,チリなどの南アメリカに分布するが,北アメリカ,イギリス,ヨーロッパ,旧ソ連,日本などで野生化している。体長43~64cm,尾長25~43cm,体重5~17kg。体はずんぐりと丸く,頭部が大きい。水生に適応し,目と耳は小さいが,尾はビーバーのように平たくなく円筒状で,後足には水かきが発達する。毛は粗い上毛と防水性が高く柔らかな下毛からなり,黄褐色ないし赤褐色。

 水生植物の茂みの間にトンネルを掘って巣をつくり,ふつう雌雄でくらす。朝夕,あるいは日中も活動するが,基本的には夜行性で,水草類や陸上の草を食べる。雌は年に2~3回出産し,妊娠期間は128~130日で,1産1~13子,ふつう5子を生む。子はよく発育した状態で生まれ,体重およそ225gで,目はひらき,上毛は十分に生え,生後2~3時間のうちに動き回り,2~3日後にはかたい植物を食べ始める。母親の乳首は体側にあるので腹ばいのまま授乳でき,さらに水面に浮かびながらも乳を与えることができる。

 毛皮が比較的良質なため世界各国で養殖され,そこから逃亡したものが野生化し,土手などに穴をあけ,キャベツやコムギなどの畑を荒らすことがあるため害獣となった。日本でも岡山県などに野生化している。現在では養殖はすたれ,多くの地方では野生化したものも数が減っているが,北アメリカでは依然として多く,毛皮として約200万頭ぶんが市場に出ている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヌートリア」の意味・わかりやすい解説

ヌートリア
ぬーとりあ
coypu
nutria
[学] Myocastor coypus

哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目カプロミス科の動物。南アメリカのチリ、アルゼンチン、ウルグアイパラグアイボリビア、ブラジル南部に分布し、北アメリカ、東アジア、東アフリカ、ヨーロッパなどに帰化している。湖沼や流れの弱い河川などの岸辺にすみ、巧みに泳ぎ水草を主食にしている。日本では1939年(昭和14)に軍用の毛皮獣として150頭が初めて輸入され、1944年には4万頭も飼育されていた。第二次世界大戦が終わると需要がなくなり、放置されたものが野生化し、岡山県や京都府、兵庫県などで帰化している。カイリネズミ(海狸鼠)、ショウリ(沼狸)ともよばれる。頭胴長43~63センチメートル、尾長26~42センチメートル、体重6~10キログラム。外形はドブネズミに似て、大形で目や耳は小さい。前・後足とも5指であるが、後足の第1~第4指間には水かきがある。体色は、長くて粗い上毛は黄褐色か赤褐色、柔らかくて上質の下毛は羊毛状で暗灰色である。尾にはまばらに毛が生えていて、鱗(うろこ)が裸出している。水辺の土手に穴を掘って、群れですむ。妊娠期間は130日ぐらいで、1年に2~3回出産する。1産1~13子、平均5子を産む。子は、体重が約220グラムもあって目は開き、毛が生えている。乳頭は胸部の体側に4対あるが、母親は5日間しか哺乳しない。子は2~3日で餌(えさ)を食べ、泳ぐことができる。生後3~4か月で成熟し、6~7か月後に出産する。寿命は6~7年。毛皮は、カワウソに似て上質である。

[土屋公幸]

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知恵蔵mini 「ヌートリア」の解説

ヌートリア

ネズミ目ヌートリア科に分類される南アメリカ原産のほ乳類の一種。水生のげっ歯類で、頭から尻までは50~70センチ、尾の長さは30~45センチ、体重は5~9キロ。上質の毛皮がとれるため、1990年代初頭から第二次世界大戦にかけ、世界各国へ移入・飼育された。日本には1939年に持ち込まれ、大戦末期の44年には4万頭ほどにまで増えた。現在は、北アメリカ、ヨーロッパ、アジア諸国で帰化動物となっており、屋外で自然繁殖している。日本では西日本に分布し、環境省指定特定外来生物となっている。農作物への食害があり、また在来生物の生態系への影響も大きいため、帰化した国では駆除が進められている。2013年7月、京都市内の鴨川でも目撃されるようになり、京都府は餌を与えないよう注意を呼びかけている。

(2013-7-26)

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百科事典マイペディア 「ヌートリア」の意味・わかりやすい解説

ヌートリア

ヌマダヌキ,カイリネズミとも。齧歯(げっし)目ヌートリア科。体長50cm,尾35cm内外。赤褐〜黒色。南米原産だが,ヨーロッパ,北米,アジア北部などで野生化している。川の土手に穴を掘ってすむ。夜行性で泳ぎがうまく,水草のほか,樹皮,野菜なども食べる。1腹3〜6子。毛皮が良質なので,一時盛んに養殖された。肉は食用。日本では外来生物法により特定外来生物に指定されている。
→関連項目ムートン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヌートリア」の意味・わかりやすい解説

ヌートリア
Myocastor coypus; nutria

齧歯目カプロミス科。体長 50cm,尾長 35cm内外。カイリネズミともいう。後肢に蹼 (みずかき) がある。尾はネズミに似ており,扁平ではない。水辺に生活し,岸に穴を掘って生活する。泳ぎが上手で,おもに水生植物を食べる。南アメリカ中・南部原産であるが,いまでは毛皮獣として各地で飼育されている。またそれらが逃げ出して,世界各地で野生化している。日本では第2次世界大戦前に輸入されたものが野生化し,ときに農作物などに被害を及ぼし,特に岡山県などでは問題になっている。

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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「ヌートリア」の解説

ヌートリア
学名:Myocastor coypus

種名 / ヌートリア
科名 / ヌートリア科
外来種 / ◎
解説 / 日本には毛皮をとるために輸入され、今では主に西日本で野生化しています。泳ぎがうまく、川岸にあなをほって生活しています。
体長 / 43~64cm/尾長26~43cm
体重 / 5~15kg
食物 / 主に水草
分布 / 南アメリカ。世界中で野生化リア

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世界大百科事典(旧版)内のヌートリアの言及

【帰化生物】より

… 偶然に帰化したものとしては,飼育していたものが逃げ出して定着したものに,1918年ころから食用に北アメリカから移入し,各地で養殖していたが,その一部が逃げ出して各地に野生化したウシガエル,そのウシガエルの餌として30年ころ神奈川に移入して養殖していたところ,大雨による出水で逃げ出して,付近の水田などに野生化し,しだいに各地に分布を広げたといわれる北アメリカ産のアメリカザリガニ,35年ころ食用に台湾から移入したものが,小笠原,奄美,沖縄などに野生化した,アフリカ原産のアフリカマイマイなどがある。また,愛玩用に飼育していたものが逃げ出して帰化したものに,北海道,岐阜の金華山などに野生化した韓国産のチョウセンシマリス,東京付近などに野生化したセキセイインコその他多数の飼鳥,動物園で飼育していたものが逃げ出して野生化したものに,伊豆大島,鎌倉などにすみついた台湾原産のタイワンリス,毛皮獣では第2次大戦中南アメリカから輸入し,各地で盛んに養殖していたが,その一部が逃げ出し,岡山その他に野生化したヌートリア,同じころ養殖されていたと思われ,東京の江戸川付近に定着している北アメリカ産のマスクラット,戦後毛皮獣として輸入され,養殖されていたものが逃げ出し,北海道で野生化した北アメリカ産のミンクなどがある。さらに,輸入した植物などに付着して偶然に入って来たと思われるものに,明治末に観賞用植物についてオーストラリアから入ってきたイセリアカイガラムシ,第2次大戦中に日本に入った北アメリカ原産のアメリカシロヒトリ,同じころ中国から入ったアオマツムシなどがある。…

※「ヌートリア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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