ネオン管を曲げてつくった広告または標示。主としてネオンガスのグロー放電の陽光柱によって橙赤色に発光する管形の放電ランプをネオン管といい,同じ形式の水銀(発光色は青緑),ヘリウム(赤みを帯びた黄),窒素(黄)などのグロー放電ランプも含まれる。また水銀封入の青緑発光のネオン管の内壁に,各種の蛍光物質を塗布した各色の蛍光ネオン管も現在普及している。ネオンサインはこれらネオン管を,広告しようとする文字や絵の形に曲げて点灯するもので,その色と華やかさにおいて電気広告媒体の花形といえる。点灯にはふつうネオン変圧器(磁気漏れ変圧器)を使用し,自動点滅装置を使って操作する。ネオン管の長さ1mにつき約1000Vの電圧を必要とする。この値が1万5000Vを超えないよう,すなわち15mごとに1台の変圧器を設置する必要がある。
執筆者:伊東 孝
ネオンサインの利用は,20世紀初めに店頭の照明用として始まり,まもなく広告媒体として利用されるようになった。1913年のロンドンのウェストエンド・シネマのネオン看板は最初期の例として知られている。20年代から屋外広告として普及し始め,30年代のイギリスでは,交通信号とまぎらわしいとして苦情が出る一方,ネオンサイン賛美のエッセーが残されてもいる。日本では,1918年に東京銀座の谷沢鞄店で用いたのが最初であるという。東京電気(東芝の前身)が国産ネオン管の製作に成功して,26年に日比谷公園納涼会で点灯され,以後急速に普及した。とくに第2次世界大戦前のネオンサイン全盛期である昭和初期には〈赤い灯,青い灯〉と当時の流行歌にもその情景が歌い込まれている。しかし第2次大戦直前からネオンサインの点灯は禁じられ,47年ころから再び点灯され始め,49年3月に全面的に解禁された。73年秋からの石油危機の際には,政府の呼びかけで点灯時間が短くなったこともある。
ネオンサインは近代都市のシンボルともいわれ,イギリスのピカデリー・サーカスやアメリカのタイムズ・スクエア,東京の銀座はネオンサインの美しい街として知られ,またその消長は国の景気の盛衰の代名詞ともなっている。一方,ヨーロッパでは由緒ある古建築保全や景観維持のためにネオンサイン設置反対の声も強く,イギリスの〈都市・田園計画法〉のような規制も設けられている。
執筆者:島守 光雄+小倉 重男
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