日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハダカイワシ」の意味・わかりやすい解説
ハダカイワシ
はだかいわし / 裸鰯
lanternfish
硬骨魚綱ハダカイワシ目ハダカイワシ科の総称、またはそのなかの一種。この科の魚類は深海性で目が大きく、大小の多くの発光器を備える。多くの種類は昼間には深く、夜間には海面近くへと数百メートルの垂直移動を行うことが報告されている。体側の発光器はいくつかの群をなして配列し、その位置関係が種類を区別する重要な形質である。頭部には目の周辺をはじめとして大小の発光器が散在し、その色も微妙に異なる。吻(ふん)は側扁(そくへん)し、腹びれは体側にある。鱗(うろこ)は一般に円鱗(えんりん)ではがれやすく、ハダカイワシの和名がつけられているが、まれに櫛鱗(しつりん)をもつ種類もある。背びれは体の中央近くにあり、その後方に脂びれがある。歯は微小で上下両顎(りょうがく)、鋤骨(じょこつ)にみられる。脊椎(せきつい)骨数は28~45個。世界中の深海に分布し、その種類は32属235種ときわめて多い。分類はむずかしい。中形、大形の魚類や海生哺乳(ほにゅう)類の餌(えさ)として重要であり、海洋における食物連鎖の重要な部分を占める。一部を除いて食用とはされない。
ハダカイワシDiaphus wataseiは、尾柄に発光腺(せん)をもたない。丸く前方を向いた鼻部背側発光器がある。眼前上部発光器をもち、胸部の発光器は5個。肛門(こうもん)上発光器は3個、尾びれ前発光器は4個。背びれと臀(しり)びれは14~16条からなり、側線鱗数は36~38個である。南日本の大陸棚およびその斜面で普通に底引網により採集される。相模(さがみ)湾から、東シナ海、フィリピンまで分布していることが報告されている。
[上野輝彌]