ハマゴウ(その他表記)Vitex rotundifolia L.f.

改訂新版 世界大百科事典 「ハマゴウ」の意味・わかりやすい解説

ハマゴウ
Vitex rotundifolia L.f.

海岸砂地に群生するクマツヅラ科の落葉低木主幹は長く砂の中を横走し,ところどころから根を出す。枝は砂の上に立ち上がって高さ30~60cm。葉は対生し,楕円形または倒卵円形,全縁で先は円いが,ごくまれに下部の葉が3裂することもある。花は,枝の先に円錐花序をつくって,夏に咲く。萼は杯形で低い5歯がある。花冠は青紫色,長さ13~16mm,2唇形で下唇は3裂して大きく開出し,内面に毛がある。おしべは4本,花の外につき出す。子房は上位で,先に2裂する花柱がある。花には少し香気がある。漢方では果実蔓荆子(まんけいし)と呼び,煎じて頭痛・風邪・強壮・消炎薬として用いる。また茎葉や果実を浴湯料として用いることもある。本州,四国,九州,朝鮮,中国,東南アジア太平洋諸島オーストラリアの海岸に広く分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハマゴウ」の意味・わかりやすい解説

ハマゴウ
はまごう / 浜栲
[学] Vitex rotundifolia L.f.

クマツヅラ科(APG分類:シソ科)の海岸生の低木。幹は地下茎となって砂中または表面を長く横走し、枝は直立して高さ20~50センチメートル。葉は異臭があり、卵形から楕円(だえん)形で長さ2~6センチメートル、全縁で先は丸いか、または鈍くとがる。表面は灰緑色、裏面は細毛を密生して灰白色。7~9月、長さ2~10センチメートルの円錐(えんすい)花序を頂生し、漏斗(ろうと)状で長さ1~1.5センチメートルの青紫色花を開く。果実は球形で径5~7ミリメートル、下半部は宿存萼(がく)で包まれる。本州から沖縄、および朝鮮半島、台湾、中国からアジア・アフリカの熱帯、オーストラリアに分布する。砂防用によく植えられる。近縁のヤエヤマハマゴウは、八重山諸島が北限で、アジア、アフリカ、ヨーロッパに分布する。

[島袋敬一 2021年9月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハマゴウ」の意味・わかりやすい解説

ハマゴウ(蔓荊)
ハマゴウ
Vitex rotundifolia; chaste-tree

クマツヅラ科の落葉低木で,東南アジア,オーストラリアなど旧世界の熱帯や亜熱帯に広い分布をもつ。北海道を除く日本各地の海岸の砂地に生える。幹は長く砂上をはい,直立する枝を出して 50cmぐらいになる。葉は有柄,楕円形で裏面に白毛を密生する。夏に,円錐形の花序を枝先につけ,多数の紫色の花を開く。花は唇形で長さ 13mmぐらい。果実は球形で香気がある。本種の果実を生薬の蔓荊子 (まんけいし) といい,漢方で解熱,強壮,清涼剤とする。また民間で浴湯料とする。

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百科事典マイペディア 「ハマゴウ」の意味・わかりやすい解説

ハマゴウ

ハマシキミとも。クマツヅラ科の落葉低木。本州〜沖縄,東南アジア,オーストラリアの海岸の砂地に群生する。茎は長く砂上をはい,直立した高さ50cm内外の枝に,卵形で裏が白い葉を対生。7〜9月,枝先に紫色の花を円錐状に密生する。花冠は唇形(しんけい)で長さ12〜16cm,下唇は大型で3裂。果実は薬用。
→関連項目海岸植物

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