翻訳|hamster
ゴールデンハムスターに代表される小獣で,齧歯(げつし)目ネズミ科キヌゲネズミ亜科Cricetinaeの哺乳類の総称。ヨーロッパからアジアに6属17種ほどが分布。大きさは変化に富み,最小種は中国北部からシベリアに分布するヒメキヌゲネズミ類Phodopusで体長5.3~10.2cm,尾長0.7~1.1cm。最大種はベルギーからバイカル湖に分布するヨーロッパハムスターCricetus cricetusで,体長20~34cm,尾長4~6cmに達する。一般に体はずんぐりしており,四肢と尾が短い。体毛は絹毛状で柔らかく,尾の基部にも長毛が密生する。口内の左右にほお袋があり,草の種子や穀類など大量の食物をつめこみ,巣穴に貯蔵する。
ふつう乾燥した草原,砂丘,砂漠の周辺などに単独ですみ,地中のトンネルに巣室をもつ。トンネルには出入口,巣室,食物貯蔵庫,便所が数ヵ所ある。寒くなると冬眠するが,ときおり目を覚ましては貯蔵した食物を食べる。おもに夜行性で,草の種子などのほかに,果実,根,葉などを食べ,種類によってはカエルや昆虫などの幼虫も食べる。雌雄は交尾のとき以外,別々にくらすが,アジア北東部に分布するハイイロキヌゲネズミCricetulus tritonの雄は交尾期に10日ほど雌の巣穴で過ごす。ふつう年に2~3回出産し,妊娠期間は15~22日で,1産4~12子ほどを生む。寿命は2~3年である。
実験動物やペットにされるゴールデンハムスターMesocricetus auratusは,1930年にシリアで捕獲された1頭の雌と12頭の子からなる1家族を家畜化した子孫である。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目キヌゲネズミ科の動物。正しくはゴールデンハムスターgolden hamsterまたはシリアンハムスターSyrian hamsterとよぶ。シリア、カフカスなどに分布している。1930年にパレスチナの動物学者アハロニAharoniがシリアのアレッポで発見した。このとき持ち帰った1腹8匹のうち、雄1匹、雌2匹から繁殖した子孫が世界中に広がり、飼育されるようになった。しかし、古代アッシリアとアナトリア(小アジア)でもハムスターを飼いならしていたという記録がある。現在では、実験動物として狂犬病、ジステンパー、日本脳炎などの研究に広く用いられ、また、ペットとしても飼育されている。頭胴長12.5~15センチメートル、尾長1.7~2.2センチメートル、体重130~180グラム。頬袋(ほおぶくろ)がある。雑食性で、貯食習性が著しく、冬眠する。妊娠期間は10~14日、1産8~10子、1年に5~6回も子を産む。生まれた子は11週で性成熟に達する。乳頭は7~8対。イギリスでは逃げ出したものが野生化して、農作物に被害が出ているという。実験動物として使用されているハムスター類には、このほかにユーロピアンハムスターCricetus cricetusやチャイニーズハムスターCricetulus barabensis griseusなどがある。
なお、ハムスターの語は広義にはキヌゲネズミ科キヌゲネズミ亜科Cricetinaeの動物を総称することもある。この亜科にはヨーロッパからアジアにかけて、5属15種ほどが知られている。
[宮尾嶽雄]
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