ハヤトウリ(読み)はやとうり

改訂新版 世界大百科事典 「ハヤトウリ」の意味・わかりやすい解説

ハヤトウリ (隼人瓜)
chayote
Sechium edule Sw.

ウリ科の宿根生つる草。たくさんなるのでセンナリウリともいう。熱帯アメリカ原産で,温帯から亜熱帯に広く栽培される。日本へは1916年ごろ,アメリカから導入されて鹿児島で試作したのが始まりで,薩摩隼人にちなんで命名された。その後,別途に白色種が旧農林省園芸試験場に導入された。現在鹿児島県,宮崎県の一部でまとまって栽培されるほかは,ほとんど自家用程度である。茎はつる性でよく伸びる。花は雌雄同株果実は8~20cmの扁平な洋ナシ形で数本の縦溝がある。果色は白か緑で,果肉緻密(ちみつ)である。大型の種子が果実の先端部寄りに1個存在し,この点でウリ科の植物としてはきわめて特殊である。繁殖は実生か根株を利用する。実生は果実のまま用い,萌芽したものを5月に植える。収穫は10月から降霜までの期間で,開花後15~20日で採果する。地下に塊根ができるので,冬季に防寒すれば毎年発芽生長する。果実は各種の漬物酢の物,汁の実,煮食などに利用し,風味は淡白である。また若芽や肉質の根も食用になる。その他棚仕立てとして夏の日よけにも利用する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハヤトウリ」の意味・わかりやすい解説

ハヤトウリ
はやとうり / 隼人瓜
[学] Sechium edule Swartz

ウリ科(APG分類:ウリ科)の多年草。おもに果実を食用とするために栽培される。茎はつる性で、長さ10メートルを超すほどになる。葉はやや五角形状で基部は心臓形、幅10~20センチメートル。雌雄異花。果実は西洋ナシ形で、色は黄白色または緑色、中に長さ5~6センチメートルの白色卵形の種子が1個ある。根はいも状に肥大してデンプン質。原産地はメキシコ南部から熱帯アメリカ地域で、ヨーロッパやアジアに伝播(でんぱ)したのは19世紀になってからである。現在は、熱帯を中心に広く栽培される。

 日本には1917年(大正6)アメリカから鹿児島に導入され、薩摩隼人(さつまはやと)にちなんで名がつけられた。関東でも育つが、鹿児島や沖縄などが栽培の適地である。春に種子を果実ごと植え付ける。霜にあうと枯れるので、日本では一年草として栽培する。未熟な果実を漬物や酢の物、甘煮、汁の実とする。また、葉や若いつるを野菜として食べ、いもは食用や飼料として利用する。つるで帽子や籠(かご)を編む。

[星川清親 2020年2月17日]


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百科事典マイペディア 「ハヤトウリ」の意味・わかりやすい解説

ハヤトウリ

熱帯アメリカ原産のウリ科のつる性多年草。初め鹿児島県に導入されたのでこの名がある。葉は広卵形でつるは棚にはわせると10mにも達する。花は雌雄同株で淡緑白色。果実は倒卵形で1株に数十〜数百個着生する。生食のほか薄く切って漬物などにする。

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栄養・生化学辞典 「ハヤトウリ」の解説

ハヤトウリ

 [Sechium edule].スミレ目ウリ科ハヤトウリ属の多年草.果実を食用にする.

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世界大百科事典(旧版)内のハヤトウリの言及

【十二支像】より

…いずれも鎧をまとい,刀を手にする武人の姿に表現され,この点が唐と異なっている。日本では,奈良の那富山墓にある隼人石(はやといし)とよばれる獣首人身の石刻を,十二支像にあてる説がある。一方,鎌倉時代の仏像,十二神将像に十二支の動物をあしらったものがある。…

※「ハヤトウリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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