改訂新版 世界大百科事典 「トウガン」の意味・わかりやすい解説
トウガン (冬瓜)
white gourd
wax gourd
Benincasa hispida (Thunb.) Cogn.
ウリ科の一年草で,果実が食用とされる。カモウリとも呼ばれるが,このカモは毛の意味で,果実に毛があるため名付けられた。東南アジア地域が原産と考えられ,熱帯アジア,中国,日本,アフリカ,アメリカで広く栽培されている。中国へは南方から入り,日本へは中国から渡来したと考えられる。《本草和名》《和名抄》にその名があり,10世紀ごろから栽培が始まったと推察される。茎は太くつる性で,葉は大きく5~7の切れ込みがある。葉色は上面が濃緑色で下面は淡緑色。茎葉ともに白色の毛が密生する。花は雌雄異花であるが,同株上に着生する。果実は大きく,円形から長楕円形で,成熟すると果面は白色の蠟質でおおわれ,淡青緑色になる。品種の分化は少なく,在来種,早生種,台湾種,琉球種などがある。旺盛に生育するため粗放栽培ができるが,低温には弱いので早まきは避ける。露地栽培は5月中旬まきで,8~9月収穫。果実は開花後40~45日で収穫できる。トウガンは貯蔵性にすぐれており,熟したものは約半年間の保存に耐える。96%が水分で,ビタミンはB1,B2,Cを含むが微量である。味は淡泊で独特な風味がある。煮食,みそ汁,あん掛け,漬物などに利用され,ときに生食され,インドではカレーに入れられる。種子は薬用や食用にされる。
執筆者:金目 武男
食用
日本では古く〈カモウリ〉といった。〈カモ〉はもうせん(毛氈)の意の氈(かも)で,外皮に毛があるための名だという。トウガンは冬瓜の音〈とうぐわ〉のなまりである。《正倉院文書》によると奈良時代には市販されており,《延喜式》にはひしお漬,かす漬などにされていたことが見られる。淡泊な風味が喜ばれて懐石料理などに用いられ,あん掛けや吸物の種とされる。きわめて大型であるため,奈良時代には1顆(か)の価格がウリ類中最高であったという。馬場文耕の《武野俗談》(1756)は,江戸で朝のみそ汁用にトウガンの切売りをしたことから産をなし,〈冬瓜仁右衛門〉と呼ばれた人物の話を伝えている。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報