ポアズイユの法則ともいう。細いまっすぐな円管の両端に圧力差を与えたときの流体の流量を支配する法則。管の半径をa,管長をl,圧力差をδpとすれば,単位時間に流れる流体の体積(流量)Qは,
Q=(πa4/8μl)δp
で与えられるというもの。ただしμは流体の粘性率である。圧力差のかわりに管を水平から角度αだけ傾けてもよい。このときは圧力こう配δp/lをρgsinαでおきかえる。ただしρは流体の密度,gは重力の加速度。流れが管軸に平行で壁での粘着条件を満足し,ニュートンの粘性法則に従うものとしてナビエ=ストークスの方程式から理論的に導かれるが,最初は1839年にドイツのハーゲンGotthilf Hagen(1793-1884),40年にフランスのポアズイユJean Léonhard Poiseuille(1797または99-1869)によってそれぞれ独立に実験的に見いだされた。このときの流れは,管軸からの半径方向の距離をrとすると,u=δp(a2-r2)/4 μlで与えられる放物形の速度分布をもつ整然とした流れ(層流)で,ポアズイユの流れPoiseuille flowと呼ばれる。ただし管口や曲管あるいは希薄気体では仮定された条件が破れる。また半径や流速が大きくなると時間,空間的に不規則に乱れた乱流に移行するので法則は成り立たなくなるが,レーノルズ数Re=ρua/μ<1000ならば層流に保たれる。
執筆者:橋本 英典
ポアズイユはフランスの医学者で,血管内での血流の研究と関連して,この法則を発見した。しかし,ガラス管での流体から実験的および理論的に得たポアズイユの式を直接血管系の血液の流れに応用し,量的に血行動態を解明することは簡単ではない。その理由として,血管は弾性体で,血液は液体成分と血球成分を含む不均等な性質をもつ液体であること,心拍と一致した拍動流で,必ずしも層流ではなく,ときに乱流を発生する場合があることなどがあげられる。にもかかわらず,この法則は近似的に血流に応用されている。すなわち,特定の血管内での流量は圧力こう配が一定な場合,口径が2倍に拡張すれば血流量は16倍となり,口径が1/2に収縮すれば血流量は1/16に激減する。実際,血流量は口径の増減によって調節されているが,口径が動脈硬化等で1/2に狭窄(きようさく)された場合,健康時と同量の血流量を確保するためには圧力こう配は16倍増加する必要があることをこの法則は示している。一方,この法則で(πa4/8μl)を血流抵抗と考えると,血流抵抗は血管長と血流の粘性に比例し,血管口径の4乗に逆比例することとなる。
執筆者:二宮 石雄
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「ポアズイユの法則」のページをご覧ください。
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