翻訳|viscometer
液体の粘度(粘性率)を測定するための計器。比較的に低粘度液体である水,アルコールなどの有機液体,石油製品類,高分子物質など,さらに広げれば,各種の気体,血液,化粧品,食品類などのほかタール,アスファルトといったように粘度測定の対象とする範囲はきわめて広い。測定原理をもとに,工業分野などに利用されている各種の代表的な粘度計について分類したものを表に示す。
測時球内の試料が液柱差により,細管をとおして流下するのに要する時間tを測定して,ハーゲン=ポアズイユの法則から誘導されるν=Atの関係(粘度が比較的に低い場合には,ν=At-B/t)を用いて直接に動粘度(動粘性率)を求めることができる。ここで,Aは粘度計定数と呼ばれ,A=πr4gh/8lVであり,また,Bは粘度計係数で,B=mV/8πlで表される。
また,πは円周率,r,lは毛細管の半径および長さ,gは重力の加速度,hは平均の液柱高さ,Vは測時球の体積,mは運動エネルギー係数で,大きくてもm=1程度の値である。粘度計定数および係数は,あらかじめ粘度が正確にわかっている液体(粘度標準液体)を用いて求めることができる。粘度計内の試料の量によって,正確に一定量を必要とするキャノン=フェンスケ粘度計(図1-a)などと,適当量でよいウベローデ粘度計(図1-b)などとがある。ほかに,円筒形状の容器内にある液体が,10~50mm程度の短い管をとおして自然流出するのに要する時間が,粘度と一定の関係にあることを利用した短管粘度計(図2)がある。
流体中に置かれた円筒,円板などを回転させるか,円筒,円板を固定し,周囲の流体に同心円状の回転運動を与えたとき,粘性によるトルクが粘度に比例することを利用して測定する。図3は共軸二重円筒形の外筒回転方式の構造である。同一中心軸にある外筒と内筒の間に試料をいれ,外筒を一定の角速度ωで回転させたときの流体の粘性によるトルクTをスプリングのねじれ角を利用して測定することにより,
から流体の粘度ηを求めることができる。ここで,πは円周率,hは円筒の長さ,⊿hは円筒が端面をもつことによる端面の補正項で,その補正量を内筒の長さで表す。R1,R2は外筒および内筒の半径,Kcは内外筒の組合せなどによって決まる装置定数である。図4は単一円筒形の例で,指針と目盛円板が,スプリングにつながった円筒とともに回転する構造になっており,粘度に比例して目盛円板上の指針が一定の角だけ変位する。回転状態にある指針の位置を読み取って粘度の値を得ることができる。図5は,円錐-平板形の例で,図のように平円板と頂角の大きい円錐間に試料をいれて,どちらか一方を回転させたときの粘性によって生ずるトルクTを測定し,η=KpT/ωの関係から流体の粘度ηを求める。ここでKpは装置定数で,Kp=3α/2πR3である。平円板と円錐とでつくられる角αは小さいことが必要で,通常は0.5~5度程度である。
流体中で物体をゆるやかな速度で自由落下させるとき,落下速度が流体の粘度に依存することを利用して測定する。落球粘度計は,直径d,密度ρ0なる球を,無限に広がった流体中にゆっくりと等速で落下させた場合に,ストークスの粘性に関する法則を応用して,次の関係から流体の粘度ηを求めることができる。ここで,ρは試料の密度,gは重力の加速度,tは一定距離の球の落下に要する時間,lは球の落下距離,fは管壁の影響に対する補正で,実際の測定には有限の大きさの円筒が用いられるから,これに対する補正が必要となる。この補正は,JISの粘度測定方法では,f=1-2.104d/D+2.09(d/D)2-0.95(d/D)5の値を採用している。ここでDは円筒管の直径である。細管粘度計も同様であるが,測定の原理式が物理法則をもとに明解な形で得られている。実験条件を整え,物理法則から導かれる関係する各量を忠実に測定すれば,粘度の絶対値を測定することができる。しかしながら通常は,あらかじめ粘度がわかっている標準液体を用いて実験的に装置定数Kfを求めておき,η=Kf(ρ0-ρ)tの関係によって粘度を求める例が多い。転落球粘度計は傾斜をもつ円筒管内の流体中で,球を転落下させたときの球の速度が流体の粘度に依存することを利用して測定する計器で,測定原理式は複雑となるが,同様の形式,η=Kr(ρ0-ρ)tで粘度が測定できる。Krは装置定数,tは球が一定距離を転落下するのに要する時間である。図6に構造図例を示す。
流体中で物体を振動させたとき,流体の粘性により振動は減衰するが,減衰が流体の粘度,または粘度と密度の積と一定の関係にあることを利用して測定する。振動片粘度計は,短冊状の薄い金属片(磁歪合金製)を高い周波数で振動させて,振動の減衰を電気的に検出,処理することにより〈粘度×密度〉の値を得る。工業計器としての実績もある。回転振動粘度計の中には,気体の粘度測定に利用されている振動円板粘度計がある。石英などの細線につるされた振動円板を2枚の固定円板間に置いて,振動円板にねじり回転振動を与えたときの試料中における対数減衰率と周期の測定から減衰定数を求めて気体の粘度を得る方法である。そのほか,振動物体として,球殻中に試料を満たしたもの,水晶片を利用したものなどがあり,前者は液体の粘度の絶対測定に利用された。後者は,圧電効果により水晶にねじり振動を与えて粘度測定を行うもので,気液両相にわたる測定に用いられたりしている。そのほか,特殊なものに,両端に固定した1本の弾性細線を利用した振動弦粘度計などがある。
平行に保たれた平板間内にある流体に対し,平板に一定の力を加えたときに起こる平板間内の流体の厚さの変化と経過時間の対応が粘度と一定の関係にあることを利用して測定する。また,一定の力を加えてどちらか一方の平板を移動させたとき,速度が粘度と一定の関係にあることを利用して測定する。平行板粘度計,板状粘度計,帯状粘度計がある。
一定の大きさの気泡が流体中を上昇するとき,上昇速度が粘度に関係することを利用して測定する。
ごく特殊な場合を除いて,粘度計は粘度の標準液体を用いて,装置定数を定めている。いわゆる比較測定法によっているが,第一次の粘度標準は1atm,20.0℃における水の粘度である。0.001002Pa・sが国際的に容認されている値である。あらゆる粘度領域の粘度計に適用できるよう,標準液体としてJISに規定された粘度計校正用標準液(13種類)がある。
執筆者:吉田 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
液体の粘度(粘性)を測定する装置。基本となる原理によって各種の形式に分類される。
(1)毛管粘度計 capillary viscometer毛管内の流動に関するポアズイユの法則(ハーゲン‐ポアズイユの法則ともいう)に基づくもので、ある圧力で毛管内に液体を押し出し、その流出液量と圧力との関係から粘度を求める。オストワルト粘度計はこの一種であり、歴史的にも、実用的にももっとも一般的なものである。ドイツのF・W・オストワルトの考案になるもので、
のようなガラス製のU字管で、Bの部分が毛管である。Cに入れられた試料を他端から吸い上げ、Aを満たしたところで自然落下させる。液面が標線a、bを通過する時間tを測定し、等容積の標準液(水)の流下時間をt0とすると、液の粘度は次式で与えられる。 η=η0(ρt/ρ0t0)
ここで、η0、ρ0は標準液の粘度、密度、η、ρは液の粘度、密度である。種々の改良型が考案されている。
(2)落球粘度計 falling-ball viscometer粘性流体中の球の運動に関するストークスの法則に基礎を置くもので、静止液体中に球を落下させて、定速度に到達したあと、一定の距離lを落下する時間tを測定し、次式から液体の粘度ηが算出される。
η=d2(ρs-ρ)gt/18l
ここで、dは球の直径、ρsは球の密度、ρは液体の密度、gは重力の加速度である。なお正確には容器の大きさに対する補正が必要である。
(3)回転粘度計 rotation viscometer同心二重円筒の間に液体を入れ、外筒を回転させ、液体の粘性によって内筒が受ける力を測定して、液体の粘度を算出する。
[大竹伝雄]
液体あるいは溶液の粘度を測定する装置.粘性を表すいろいろな法則に対応して,主として3種類の形式の粘度計がある.
(1)毛管粘度計;代表的なものはオストワルト粘度計,ほかにウベロード,キャノン-フェンスケ,ソープロージャ粘度計などがある.ハーゲン-ポアズイユの法則(Hagen-Poiseuille's law)に基礎をおき,ある圧力で毛管中を一定体積の流体が流れる時間を測定して,粘度を求める方法である.測定がニュートン流体の原理にもとづいているので,非ニュートン流を呈するときには厳密には応力(速度勾配)0へ外挿した値を用いなければならない.
(2)落球粘度計;ラワチェック,ヘプラー気泡粘度計などがある.ストークスの法則に基礎をおき,粘性流体中で球を落下させ,その落下速度を測定して粘度を求める方法である.
(3)回転粘度計;クエット型,ブルックフィールド粘度計などがある.同一軸のまわりに回転する二重円筒内の液体の粘性流動に関するクエットの法則(Couette's law)に基礎をおき,クエット型は外筒を回転させ,粘性により内筒がうける慣性モーメントを測定して粘度を求める方法と,外筒を固定し,内筒に一定の力を加えて回転させたときの回転速度から粘度を求める方法がある.
そのほかの粘度計としては,平行板粘度計,振動粘度計などがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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