ドイツの作曲家R.ワーグナーが,自らの舞台芸術の理念を実現するため,バイエルン州のバイロイトに建設した祝祭劇場で催される音楽祭。この劇場はバイエルン王ルートウィヒ2世の援助のもとに1876年に完成され,同年8月13日から4日間にわたって四部作《ニーベルングの指環》全曲がワーグナー自身の演出とH.リヒターの指揮で初演されたのが第1回目で,82年には《パルジファル》が初演された。その後,1944年まで不定期に開催されてきたが,第2次大戦による中断を経て1951年に復活してからは毎年開かれるようになった。開催時期は7月下旬から8月下旬まで。演目は,1841年に完成された《さまよえるオランダ人》以降に作曲されたワーグナーの10作品に限られ,毎年数作品が選ばれて上演されている。ワーグナー作品上演のメッカといわれ,つねに新しい試みを盛り込んでいるのが特色で,一流の指揮者,歌手,演出家などが参加し,欧米のオペラ界の注目の的になっている催しでもある。
執筆者:成沢 玲子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ドイツの作曲家R・ワーグナーが、自作の楽劇を上演するために1876年に創設した音楽祭。ルートウィヒ2世の援助により建設されたドイツのバイロイトの祝祭劇場で、毎年7月末から8月末まで催される。劇場の内装は木で、オーケストラは舞台の下になかば沈む形のため、彼の楽劇上演にもっとも適した音響をもつとされ、全世界のワーグナー愛好家が集まる。音楽祭は、その時代の最良のワーグナー歌手や指揮者を集めて行われ、演出面でも新しい実験の場となる。ワーグナーの死後も妻コジマをはじめ子孫が運営に深くかかわり、とくに第二次世界大戦後は、孫のウィーラント・ワーグナー(1917―1966)が象徴的な新演出の面でも一時代を画した。
[美山良夫]
『『ミュージック・ギャラリー5・17 バイロイト音楽祭Ⅰ・Ⅱ』(1984、1987・音楽之友社)』▽『G・スケルトン著、山崎敏光訳『バイロイト音楽祭の100年』(1976・音楽之友社)』
「バイロイト祝祭劇場」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ことに第2次世界大戦後は,各国でおびただしい数の音楽祭が創設され,観光ブームとあいまって隆盛をきわめている。 クラシック音楽系の催しを傾向別に概観してみると,(1)楽聖とそのゆかりの地にちなんだもの バイロイト音楽祭(ワーグナーの作品のみ,ドイツ),ザルツブルク音楽祭(モーツァルトの作品が主体,オーストリア)など。(2)大都市の名を冠した総花的なもの ウィーン芸術週間,〈プラハの春〉国際音楽祭,大阪国際フェスティバルなど。…
※「バイロイト音楽祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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