百科事典マイペディア 「バン・デ・ベルデ」の意味・わかりやすい解説
バン・デ・ベルデ
→関連項目オルタ|クレーラー・ミュラー美術館
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ベルギーの建築家、工芸家。アントウェルペン(アントワープ)に生まれ、同地の美術学校に学んだのち、パリに出て新印象派の画家や象徴派の詩人と交わる。1889年からブリュッセルのグループ「二十人組」に加わり、ここでイギリスのウィリアム・モリスの社会的広がりをもった仕事に影響され、デザインに転じた。92年ブリュッセルに産業美術工房を設立、97年の自邸の建築に際しては建物から生活用具のいっさいを有機的デザインで貫いた。その新しい装飾の方向が、パリの美術商ビングによってアール・ヌーボーとして紹介され、さらに同年ドレスデン工業博覧会出品の家具や装飾が彼の評価を国際的にした。99年ベルリンに移り、1902年からはザクセンのワイマール大公の招聘(しょうへい)で教育活動に従事、06年にはワイマール美術学校を設立し、やがてバウハウスにその理念を受け渡した。第一次世界大戦中はスイスに移住、戦後は26年にブリュッセルで装飾芸術研究所を創立して教育活動を続けるかたわら、オッテルローのクレーラー・ミューラー美術館(1937~54)などを設計。第二次大戦後はふたたびスイスに移り、チューリヒに没。建築やデザインにおける画一主義の趨勢(すうせい)のなかで、生涯を人間的な発想で全うした意義は大きい。著作に『近代建築美の公式』(1917)、『回想録』(1962)などがある。
[高見堅志郎]
ベルギー出身のアール・ヌーボーの建築家,デザイナー。アントワープ生れ。はじめ絵画を学ぶ。まずブリュッセルの自邸(1895)で家具・食器類まで含め,有機的曲線に満ちたアール・ヌーボーのデザインを試みる。これが美術史家マイアー・グレーフェJ.Meier-Graefeと美術商ビングS.Bingの目にとまり,招かれてパリのビングの店に家具類を出展。ついでドイツに招かれ,ハーゲンのフォルクワング美術館(1902),ワイマール工芸学校(1907),ケルンのドイツ工作連盟博モデル劇場(1914)を手がける。第1次大戦勃発後スイスに移り,オランダのクレーラー・ミュラー家の依頼によりオッテルローに美術館(1937-54)を設計する。また《近代工芸のルネサンス》(1901)などの著書によりアール・ヌーボーの理論家としても知られる。
執筆者:山口 廣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…オルタはタッセル邸,ソルベー邸などの建築・室内装飾で,鞭あるいはつる草のような曲線を多用した。またバン・デ・ベルデは,あらゆる領域を手がけた総合的なデザイナーで,後にバウハウスにも大きな影響を与えている。フランスでは,ギマールが99年から翌年にかけてパリの地下鉄駅入口をデザインし,鋳鉄によって植物的な曲線をあらわした。…
…さらにボイジーCharles A.Voyseyは,時代的な様式主義のディテールから脱却して近代装飾へ前進した。1893年ブリュッセル市の博覧会に〈アール・ヌーボー〉という名称をつけて,独創的な様式の装飾を提案したバン・デ・ベルデは,大陸風のロココ的な有機的形態によって歴史様式を打ち破った。しかしアール・ヌーボーはドイツ,フランス,オーストリアなどにひろまったが,結果的には一種の様式主義に堕して消失した。…
…創設者W.グロピウスはこの新しい傾向のなかでももっとも際だった存在で,ファグス靴工場(1911),ケルンのドイツ工作連盟博覧会(1914)の建築で,新しい建築言語を確立していた。現実的には,ワイマール工芸学校の校長であったH.バン・デ・ベルデが第1次大戦の勃発によって敵国人になったため,後事をグロピウスに託そうとしたことからはじまる。グロピウスは大戦中に学校側から交渉をうけ,大戦後の1919年に校長に就任,大公アカデミーと工芸学校を併合して,25年〈ワイマール国立バウハウスStaatliches Bauhaus,Weimar〉と改称した。…
…同じく創立会員のアンソールは,独特の幻想世界を創造,強烈な色彩と大胆な筆致により,表現主義の先駆ともなった。 世紀のかわり目に主として工芸・建築に新風を吹き込んだアール・ヌーボーの運動においても,オルタとバン・デ・ベルデという傑出した建築家を生んだベルギーの役割は大きい。さらに後者は1901‐14年にドイツで活動して機能主義の美学を標榜するバウハウス運動を準備し,帰国後は装飾を排した近代建築の推進者となった。…
※「バン・デ・ベルデ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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