翻訳|pamphlet
出版物の一形態で,内容上は書籍と同じであるが,ページ数が少なく,簡単な製本でできている小出版物。多くは仮綴じ。パンフと略称され,小冊子ともいわれる。書籍との区別は画定し難く,一般に6ページ未満のもの(デンマーク),49ページ未満(カナダ,フィンランド,ノルウェー),100ページ未満(イタリア,日本)などと国によっても漠然と異なっていた。このため,ユネスコでは1964年第13回総会で,《図書及び定期刊行物の出版についての統計の国際的な標準化に関する勧告》を採択した。そこでは〈小冊子とは,いずれかの一国で出版され,かつ,公衆の利用に供される少なくとも5ページ以上48ページ以下(表紙を除く)の印刷された非定期刊行物をいう〉とある。
pamphletの語は,小冊子の形で流布していた12世紀のラテン語恋愛詩pamphilus seu amoreの通俗名に由来する。その後,パンフレットは,宗教上の問題を議論する際に,みずからの立場を発表するものとして,15世紀ごろから使用されはじめ,しだいに政治問題や思想問題に関する小論文や記事を中心に,宣伝を目的に用いられるようになった。T.ペインらに代表されるように,パンフレットの作者はパンフレッティアpamphleteerと称され,アメリカ独立革命やフランス革命時には扇動家として活躍した。また,社会主義運動において,パンフレットは人々への啓蒙宣伝活動の一環として広く利用された。日本でも,1920年代に堺利彦らの無産社が〈無産社パンフレット〉を発行し,学生・労働者への社会主義の啓蒙に努めた。一方,政府機関も啓蒙宣伝にパンフレットを活用した。たとえば陸軍省新聞班は多くのパンフレットを発行したことで知られるが,なかでも1934年10月の《国体の本義とその強化の提唱》は,軍部の政治介入として波紋を起こした(陸軍パンフレット事件)。また日中戦争開始時の37年10月には,政府が《我々は何をなすべきか》を1300万部発行し,全国各戸に配布し,戦争への動員を図った。このように,パンフレットは廉価にできる啓蒙宣伝の媒体物として広く利用される。
→政治宣伝 →ビラ
執筆者:大塚 孝嗣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
冊子形式の一色もしくは多色使用の商業印刷物。製本は仮綴(かりと)じ、ページは数ページから数十ページのものにわたる。規格としては、A5、A6、B5の各判が多いが、B4判、A4判の大きなものや変型のものもある。ほぼ同様な意味で使われるブックレットbookletとは、表紙をつけ、見返しや扉を配して本格的に製本し、本に近い体裁にしたものをいう。パンフレットの語源には定説がなく、定義としては、その初期には大衆教化の宗教宣伝物を主としていたものが、一般の読み物に発展してきたように、「てっとり早く、より多くの、より広い範囲の相手に伝える印刷物」といえる。新聞、雑誌も最初はパンフレットで、のちにそれが内容、体裁の両面で分化し、それぞれがジャーナリズムの機能を発揮するようになった。今日では商業的な広報印刷物として主要な地位を占めているが、政治性を帯びた宣伝物としていまなお利用されている。パンフレットの最初は1601年、当時イギリス最大の商業組合であった冒険貿易商会のつくった『商業論』といわれる。日本では1786年(天明6)に黄表紙の創始者恋川春町(はるまち)が書いた『三舛増鱗祖(みますますうろこのはじめ)』という宣伝のために顧客に配った景物(けいぶつ)本が最初である。
[島守光雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…今日のような,楽曲解説等が書きこまれるようになったのは19世紀半ば以降のことである。印刷物の形態としても,一枚の紙,あるいは二つ折り4ページに印刷されたものから,しだいに小冊子(すなわちパンフレット。略して〈パンフ〉とも)の形式が普通となり,今日にいたっている。…
※「パンフレット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加