デジタル大辞泉
「案内」の意味・読み・例文・類語
あん‐ない【案内】
[名](スル)
1 道や場所を知らない人をそこに導くこと。また、ある地域を見せて歩くこと。「館内を案内する」「道案内」
2 取り次ぐこと。「案内を請う」
3 事情やようすなどを知らせること。また、その知らせ。「事業案内」「入学案内」
4 物事の内部のようす。内情。「その家の案内に明るい」
5 事情をよく知っていること。承知。「先刻御案内のこととは思いますが」
「町の近くにある写真屋は節子もよく―だった」〈藤村・新生〉
6 客を招くこと。招待。「披露宴に御案内します」
7 官庁で後日の参考にするために、書き写したもの。また、文書の下書き。草案。
「頭の弁して―は奏せさせ給ふめり」〈紫式部日記〉
8 物事の事情や内容を明らかにすること。また、問い尋ねること。
「宮の辺に―しに参らまほしけれど」〈枕・二七七〉
[補説]中古のかな文では「あない」と表記されることが多い。
[類語](1)手引き・導き・誘導・先導・嚮導・ガイド・道案内・先達・露払い/(3)知らせ・通知・告知・連絡・通告・通達・通牒・報・インフォメーション
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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あん‐ない【案内】
- 〘 名詞 〙 ( 中古のかな文では、撥音「ん」を表記しないで「あない」と書くことが多い ) 本来、「案」は文書の写し、および下書きをいい、「案内」は案の内容を意味した。平安時代以後、内情、事情その他の意に転じて用いられている。
- ① 官庁で作成した文書の内容。
- (イ) 保存して後日の参考にするため、文書を書き写したもの。また、その内容。この語は、多くは「案内を検ずるに」のように用いられた。あない。
- [初出の実例]「又撿二養老二年六月四日案内一云」(出典:続日本紀‐養老四年(720)三月己巳)
- 「今撿二案内一、八年十一月九日葛城王等願二橘宿禰之姓一上レ表」(出典:万葉集(8C後)六・一〇〇九・左注)
- (ロ) 文書の下書き。草案。
- [初出の実例]「頭の弁してあないは奏せさせ給ふめり」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年一〇月一六日)
- ② 物事の事情、内容。
- (イ) あることがらの内々の事情。また、ある地域や建物などの内部の様子。実情。
- [初出の実例]「あないも知らぬ人は、大将の一つ御腹なめりときこゆ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上上)
- 「僧等、案内を不知(しら)ざるに依て、此の寺に寄て宿りぬ」(出典:今昔物語集(1120頃か)一七)
- (ロ) ( ━する ) 事情、様子を明らかにすること。また、問い尋ねること。
- [初出の実例]「悩み給ふとてあるは、まことかそらごとか確かにあないして言へ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲下)
- ③ ( ━する ) 取り次ぐこと。取り次ぎ。また(訪問者が)取り次ぎを頼むこと。
- [初出の実例]「人は今あないして聞こえむ」(出典:落窪物語(10C後)二)
- 「イヤ、参る程に是じゃ。先案内を乞(こは)ふ」(出典:虎寛本狂言・二人大名(室町末‐近世初))
- ④ 法会への出仕を知らせること。
- [初出の実例]「請僧百口参否歟可レ令二校合一。皆参之後可レ申二導師案内事一」(出典:大乗院寺社雑事記‐文正元年(1466)四月晦日)
- ⑤ ( ━する ) 道や場所をよく知らない人を手引きすること。先にたって、目的の場所まで連れていったり、ある場所を見せて歩いたりすること。また、その人。
- [初出の実例]「其後今出河殿え案内を啓し奉る」(出典:応仁略記(1467‐70頃か)下)
- 「この中に落ちて死ぬ事がありますかと、案内(アンナイ)に聞いたら」(出典:満韓ところどころ(1909)〈夏目漱石〉一七)
- ⑥ ( ━する ) 事情、様子などを知らせること。しらせ。便り。現代では、催し、事業などの内容・期日などを知らせたり、説明したりする場合に用いることが多い。「案内広告」「案内状」
- [初出の実例]「その後、内々にもあんない申さねば、いと甲斐なきやうなりや」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)一)
- ⑦ 事情を知っていること。承知。接頭語「御(ご)」を伴って相手への敬意を表わすことが多い。
- [初出の実例]「九州之内一国令其国案内候在庁に仰付、惣田庄公可下令二注進一給上也」(出典:大隅桑幡家文書‐建久八年(1197)閏七月日・大隅国図田帳写)
- 「われ達(たち)も案内の通(とほり)、去年の夏から取付の俄(にはか)大名」(出典:浄瑠璃・源頼家源実朝鎌倉三代記(1781)三)
- ⑧ ( ━する ) あいさつすること。ひとこと断わること。許可をえること。
- [初出の実例]「天台の末寺の内なる木をば、心に任せて、案内も不云(いはず)して可被折(をらるべ)きぞ」(出典:今昔物語集(1120頃か)三一)
- ⑨ ( ━する ) 客を招くこと。招待。
- [初出の実例]「さとにまかりていでたらんに、かならずあ内し侍らむといひけり」(出典:閑居友(1222頃)下)
案内の語誌
漢語本来の意味としては「事件の内に・一件中に」などを指すが、日本では、上代・中古の格(律令を執行するための臨時の法令)、符(上級官司から下級官司に出す命令文書)等の古文書、記録、日記類の漢文あるいは変体漢文に①の意で盛んに用いられ、日本語として独自の意味をもつようになった。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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案内
あんない
[現在地名]八王子市南浅川町・高尾町
上椚田西部の広域にわたる地名。北部に高尾山とその東西に延びる山稜、南には大平山・榎窪山などが連なり、その間に案内川が深い谷をつくる。同川は相州境の大垂水峠を水源として高尾山南麓を巡って東流し、中ノ沢川・入沢川・榎窪川・前沢川などの水を集めて、北東の小名落合で小仏川に合流する。永禄三年(一五六〇)関東に侵入した越後の長尾景虎(上杉謙信)は、関東の反北条氏の在地豪族を麾下におさめつつ南下、翌四年多摩地域は越後勢の攻撃にさらされた。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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案内
あない
「あんない」とも。(1)文書の下書き,もしくは草案。草案を「案」ということからきている。「案」の内容ということで,草案の内容をさすことがある。(2)役所やしかるべき機関で作成された文書の内容。とくに保存して後日の参考にする目的で作成された文書の内容。「案内を検ずるに○○」のように使われ,「以前のしかるべき文書の内容により先例を調べてみると,○○である」という意味を示すことが多い。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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