大腸や小腸など消化管の壁のなかには
ヒルシュスプルング病は、この神経節細胞が先天的に欠如しているため、蠕動運動が起こらず慢性の便秘になり、大腸が拡張します。
生まれてすぐの赤ちゃんでは、
胎便が排出された時期はいつか、乳児ではおなら(ガス)が出ているか、何をどのくらい食べているか、便の性状と排便の頻度などを確認します。その後、腹部膨満の有無や、肛門から指を入れてガスの噴出や便の有無を確認します(直腸指診)。
腹部X線検査を行い、拡張した腸管ガス像が腹部全体に認められ、小骨盤内の腸管ガス像が欠如していればヒルシュスプルング病を疑い、さらに注腸造影検査を行います。この病気では造影剤を注入した際、大腸の肛門側が狭くなっていることと口側の拡張および口径差を確認します。
さらに直腸肛門内圧検査を行い、直腸肛門反射(直腸が拡張した際に認められる肛門管圧の下降)の欠如を確認します。また、直腸粘膜の生検を行い、腸管壁内の神経節細胞の欠如に伴う外来神経の増加を組織学的に確認します。
腸管壁の神経節細胞が欠如した領域が非常に狭い場合は、浣腸などでコントロールできることもありますが、ほとんどは腸管の無神経節領域を切除し端々をつなぎ合わせる手術が必要です。無神経節領域の広さにより、根治手術を行う場合や、人工肛門や
がんこな便秘が続く場合は小児科医に相談してください。
大塚 宜一
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
先天性巨大結腸症congenital megacolonともいう。便秘を主症状とする先天性の腸閉塞症で,1886年ヒルシュスプルングHarald Hirschsprung(1830-1916)により初めて報告されたので,この名がある。原因は大腸下部の神経節細胞が先天的に欠如しているためで,病変部の腸管が持続的に収縮して狭くなり,腸内容の通過が妨げられることによる。出生数5000に1例の割合でみられ,男女比は5対1である。病変部は直腸またはS状結腸であることが多く,この部分は狭小となり,それより口側の腸管は生後1ヵ月ころから二次的に拡張し,巨大結腸を呈する。しかし病変が結腸全体に及ぶ場合は,必ずしも巨大結腸を呈さない。
症状としては次の三つの場合がみられる。(1)新生児ヒルシュスプルング病 ヒルシュスプルング病の大多数は生後1週間以内に発症し,急性腸閉塞症状を示す。95%に胎便排出遅延がある。(2)ヒルシュスプルング病に伴う腸炎 ときに劇症型の腸炎がみられる。(3)乳幼児ヒルシュスプルング病 便秘,腹部膨満,巨大腸管,発育不全がある。放置すれば脱水や栄養障害を起こし,生命の危険があるが,まれに軽症では浣腸や下剤で年長に達することがある。バリウムによる注腸造影では,一般に大腸下部の狭小化と口側腸管の拡張が認められる。直腸肛門部の内圧測定や直腸粘膜の組織化学染色が診断に用いられている。治療としては,神経節細胞のない狭小部腸管を切除し,正常の腸管を肛門につなぐ根治手術が必要である。
→イレウス
執筆者:瀧田 誠司+伊藤 泰雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
新生児にみられる代表的な小児外科疾患で、生後早期から始まる便秘、腹部膨満、胆汁性嘔吐(おうと)など腸閉塞(へいそく)症状を主訴とする。デンマークの小児科医ヒルシュスプルングHarald Hirschsprung(1830―1916)により記載されたので、この名でよばれる。原因は、腸の蠕動(ぜんどう)運動をつかさどる腸管壁内の神経節細胞が、部分的に欠如していることによる。腸蠕動がないため腸内容を肛門(こうもん)側に輸送することができず、腸閉塞症状をきたす。この無神経節腸管はかならず肛門を含み、口側への長さは症例によって異なり、なかには回腸末端まで無神経節部の及ぶこともある。古くは本症を巨大結腸症とよんでいた。しかし、それが下方にある無神経節腸管にうちかつべく、上方の正常腸管が異常に蠕動を高めたための二次的巨大結腸であることがわかり、現在ではこの病名は使われない。治療は、病気の本態である一見正常な肛門側の無神経節腸管を切除し、正常神経節腸管を肛門と吻合(ふんごう)する手術を必要とする。しかし新生児期は、安全のため、まず人工肛門を正常神経節結腸に置くことが多い。
[戸谷拓二]
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