ビニル重合(読み)びにるじゅうごう(その他表記)vinyl polymerization

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ビニル重合」の意味・わかりやすい解説

ビニル重合
びにるじゅうごう
vinyl polymerization

付加重合の一つ。炭素‐炭素二重結合をもったCH2=CHXの組成化合物ビニル化合物というが、このビニル化合物は二重結合が開いて線状重合体を与える。この反応をビニル重合という。

 この反応はラジカル的にもまたイオン的にも進行するが、そのおこりやすさは、ビニル単量体(ビニルモノマー)の性質、とくに置換基Xのかさ高さによる立体障害、電子を引き付けるかまたは押し込むような極性効果、あるいはXと二重結合との間の共鳴効果などに支配される。ビニル化合物のほかにビニリデン化合物CH2=CXYやビニレン化合物CHX=CHYの重合をも含む場合もある。

 ビニリデン化合物はラジカル単独重合で重合体を与えるが、ビニレン化合物はXとYがフッ素と水素以外はラジカル単独重合はしない。他のビニル化合物との共重合は可能である。ラジカル単独重合は不可能でもイオン的な重合は可能である。いずれもその構造と重合性とが密接に関係している。

垣内 弘]

『シーエムシー編・刊『ケミカル・リサーチ・シリーズ 重合触媒の特許分析――ビニル重合を中心として』(1970)』『古川淳二著『高分子のエッセンスとトピックス2 高分子合成』(1986・化学同人)』


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化学辞典 第2版 「ビニル重合」の解説

ビニル重合
ビニルジュウゴウ
vinyl polymerization

炭素-炭素二重結合を有するビニル化合物(CH2=CHX),ビニリデン化合物(CH2=CXY)およびビニレン化合物(CHX=CHY)は,単に二重結合が開いて次のように重合する.

この形式の重合をビニル重合という.重合は連鎖反応で進む.一般に,ビニル重合の起こりやすさは単量体の構造,すなわち,置換基の立体障害,極性効果,共鳴効果などにより決まる.ある種のビニル化合物では,ビニル重合と同時に別の形式の重合が進行する場合もある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ビニル重合」の意味・わかりやすい解説

ビニル重合
ビニルじゅうごう
vinyl polymerization

合成樹脂をつくる重要な反応の一つであって,特にビニル化合物 ( CH2=CHR ) やビニリデン化合物 ( CH2=CRR' ) の二重結合部分が,光,熱,放射線,触媒の作用によって付加重合し,高分子化合物を生成する反応をいう。ビニル化合物ではエチレンプロピレンスチレン塩化ビニルなど,またビニリデン化合物では塩化ビニリデンメタクリル酸やそのエステルなどが有用な重合体を与える。ビニル重合は方式によって,塊状重合 (溶媒を用いず,単量体のままでの反応) ,溶液重合 (溶媒を用いる反応) ,乳化重合懸濁重合とに分類できる。

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