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〈懐疑派の祖〉と呼ばれるギリシア哲学者。エリスの人。画家として出発し,やがてデモクリトス学派の哲学者アナクサルコスAnaxarchosに学び,師に従ってアレクサンドロス大王のインド遠征に参加する。そこで彼はヨーガ行者たちに出会って,これまでの生き方,考え方を一変させる衝撃を受けたといわれる。いっさいは無常であり,万物について,何ひとつ積極的に〈何か〉であると確言することはできない。移ろいゆく現象を永遠の実在と錯覚することから魂の苦悩が始まる。それゆえ,いっさいの判断を〈留保〉(エポケー)し,魂を何ものにもかき乱されない〈寂滅〉(アタラクシアataraxia)に導くことこそ人生の目的であり,人間の完成であるとした。後世の懐疑派がもっぱら認識論的批判に終始するのに対し,彼は魂の安らぎを求める実践的観点から懐疑を主張したのである。なお,ピロニズムPyrrhonism(懐疑論)の語は彼の名に由来するもの。
執筆者:大沼 忠弘
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…〈判断中止・停止〉を意味する哲学用語。古代ギリシアの懐疑論者ピュロンは,さまざまな哲学説の真偽を判定しようとしたが徒労に終わり,いたずらに苦悩を増すだけであった。それゆえ彼は心の平静を得るべく,判断停止を決意した。…
…古代の懐疑派は通常三つの時期に区別される。初期にはピュロン(その名に由来するピュロニズムは懐疑論の別名となった)とその弟子ティモンTimōnがおり,彼らは何事についても確実な判断を下すのは不可能であるから,心の平静(アタラクシア)を得るためには判断の留保(エポケー)を実践すべきことを説いた。中期はプラトンゆかりの学園アカデメイアの学頭であったアルケシラオスArkesilaosとカルネアデスKarneadēsに代表される。…
※「ピュロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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