日本大百科全書(ニッポニカ) 「フェルマーの原理」の意味・わかりやすい解説
フェルマーの原理
ふぇるまーのげんり
Fermat's principle
幾何光学の基礎になる原理。「2点間を進む光の径路は、幾何学的に可能な径路のなかで所要時間が極値をとるもの」と表現される。これに基づき、媒質境界での光線の反射・屈折や、光の波長の程度ではほとんど屈折率が変わらないような不均一媒質での光の径路を決めることができる。1661年にフランスの数学者フェルマーが定式化し、屈折の法則を導出した。均一媒質中での光の直進は、特別な場合として得られる(以下で光速という場合、波長と振動数の積を意味する)。
いま光速vA、vBで光が進む媒質A、Bが平面で接するとき、光がP→R→Qと進む所要時間tは、 の(1)より
である。tがxの変化に対して極値をとる条件から、vA/vB=sinθ/sin∅が得られ、屈折の法則になる。この式は、それぞれの媒質の絶対屈折率nA=c/vA、nB=c/vB(cは真空中での光速)を用いた形nB/nA=sinθ/sin∅(スネルの関係、スネルの法則)にも表される。反射の法則については の(2)から、実際の径路P→R→Qが最短時間になることがわかる。2媒質が平面で接するときtの極値は最小値になるが、一般の曲面の場合に極大値になることも、また極大にも極小にもならないこともある( の(3))。しかしながら、原理の表現を、「固定された2点間P、Qを光が進む所要時間は、途中の径路の任意の微小変化に対し不変、すなわち所要時間の径路に関する変分が0である」として、その内容を変分原理
として表せば、曲面での屈折・反射や不均一媒質中での光の径路を含め幾何光学の内容を与える基本式となる(1/vのかわりに径路上の絶対屈折率n=c/vを用いてもよい)。物質粒子のもつ波動性を用いて、エネルギー一定の質点の運動を決める力学での最小作用の原理を書き直すと、この変分原理に対応した関係が得られる。
[藤井寛治]