日本大百科全書(ニッポニカ) 「フランス共同体」の意味・わかりやすい解説
フランス共同体
ふらんすきょうどうたい
La Communauté Française フランス語
フランスと旧フランス領諸国との特殊な国家結合。1958年のフランス第五共和国憲法によって、従前の「フランス連合」にかわって設けられたもの。共同体設立の背景には、アルジェリア独立戦争打開の衆望を担ってフランス大統領に登場したドゴールが、各植民地に自治か独立かを選ばせ、自治を選んだものを自治共和国としてフランス大統領を中心とする結合関係につなぎ留める方針をとったという事情がある。共同体は、共同体参議院、共同体行政院、共同体裁判所をもち、フランス大統領が共同体大統領を兼ねる構造になっていた。
1958年9月のフランス共同体を定めた憲法の国民投票では、海外諸領は、独立を選んだギニアを除き、すべて大幅な自治を認められた共和国として共同体に参加した。しかしその後これらの諸国の独立の要求は強く、フランスは1960年5月、共同体諸国は共同体を離脱せずに独立できるように憲法を改正し、この結果、共同体構成国は1960年中にすべて完全独立を達成した。1961年1月、コートジボワール、オートボルタ(現ブルキナ・ファソ)、ニジェール、ダオメー(現ベナン)の4か国が共同体離脱を決めたため、共同体は解体に瀕(ひん)し、フランスはこれを食い止めるため、各政府首長の定期会合などを設けて収拾に苦慮した。フランス共同体に残留する国は、フランスと個別的に加入協定を結んだ。こうしてフランス共同体は、当初の憲法に基礎を置いた連邦形態から、国別の加入協定に基づく国家連合的な形に変化した。現在の共同体は、フランス本国、海外諸県、海外領土のほか、マダガスカル、セネガル、ガボン、チャド、中央アフリカ、コンゴからなっているが、結び付きはきわめて緩く、共通語としてフランス語が話されることぐらいで、実体は形骸(けいがい)化している。
[池田文雄]