改訂新版 世界大百科事典 「ブドウスカシバ」の意味・わかりやすい解説
ブドウスカシバ (葡萄透翅)
Paranthrene regalis
鱗翅目スカシバガ科の昆虫。翅の開張3~3.5cm。前翅は赤褐色,後翅は外縁部と横脈上が赤褐色だが,翅の大部分が透明。腹部は黒地に橙黄色帯がある。5~6月に出現し,昼飛性で灯火には飛来しない。北海道から九州までと,朝鮮半島,中国東北部に分布する。幼虫はブドウ,エビヅルなどの新梢(しんしよう)や葉柄などに食入する。細い枝に潜入すると,その部分が膨れて虫こぶとなる。年1回の発生で,老熟幼虫で越冬し,翌春4月下旬ころ蛹化(ようか),約10日で羽化する。ブドウ園の害虫として昔から注目されてきた。害虫駆除を兼ねて秋に剪定(せんてい)された虫こぶのついた小枝は業者に売られ,中に潜んでいる幼虫を釣餌や小鳥の餌にするため,エビヅルノムシあるいはブドウムシとして市販されている。販売期間は,秋から早春に蛹化するまでの期間である。成虫が羽化するときは,糞のつまった食入孔から前半身をのり出すような形で蛹殻を残す。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報