チェコ南東部,モラビアの中心都市で,この国第2の都市。人口36万7729(2004)。ドイツ語ではブリュンBrünn。カトリック司教座があり,かつてのモラビア辺境伯領の主都。ボヘミア・モラビア高地の南東,スブラトカSvratka川とスビタバSvitava川の合流点にある。モラビアの経済,文化,交通の中心地で,伝統的な繊維工業(ことに毛糸,毛織物)を代表として,機械(ボイラー,蒸気タービン,鉱山設備など),化学,精密機械(タイプライター,計測器,時計)のほか,食品工業(ビール,ブドウ酒,食肉)などが盛ん。毎年国際見本市が開かれる。
市内には総合大学,工科大学,農業大学,音楽院などの各種教育機関,国立劇場,オペラ座,オーケストラなどの芸術機関をはじめ,植物園,動物園,スポーツ・センター,博物館,図書館,放送局などの文化施設が数多く存在する。また旧市街を中心としてゴシック,ルネサンス,バロック式などの歴史的建造物も多く見られる。なかでも15世紀に建てられた聖ペテロ・パウロ教会は市のシンボル的存在であり,市の中心シュピルベルクの丘にある古い城は,フス派戦争や18世紀のフリードリヒ2世(大王)の軍隊の攻撃に耐えた。なおこの城は1740年から約1世紀間オーストリアの,1939-45年にはナチス・ドイツの監獄として使用されていた。この丘の下方には,世界的に有名な遺伝学者メンデルと作曲家ヤナーチェクが過ごしたアウグスティン修道院がある。
1090年にはこの地にプシェミスル家の城があったことが確認され,1197年よりモラビア辺境伯の居城となった。元来スラブ入植者の土地であったここに12~13世紀にドイツ人の移住をみ,やがて町はドイツ化していった。1243年には都市に昇格し,ハプスブルク家支配の時代を通じて,モラビアの政治・経済・文化の中心地となった。1788年にブルノ郊外で石炭が発見されたことにより,19世紀には繊維工業が大いに発展し,〈モラビアのマンチェスター〉の異名をとるまでになった。工業化のためにチェコ人労働者の数が増え続け,階級闘争が民族闘争と同時に進行していった(1918年には市の全人口の5分の3がドイツ人)。1899年にオーストリア社会民主労働者党大会が開かれ,〈ブリュン綱領〉が採択された所としても知られている。
執筆者:稲野 強
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チェコ、モラビア地方南部の中心都市。人口37万9185(2001)。ドイツ語名ブルンBurünn。首都プラハに次ぐ同国第二の都市。チェコモラバ高地とドナウ川沿岸低地の接点、スブラトカ川とスビタバ川の合流点にあり、古くからの交通の要地。機械、兵器、電気工業、伝統ある繊維工業が盛んな工業都市で、毎年国際見本市が開かれる。総合大学や高等教育機関、諸研究所、交響楽団などの文化施設があるモラビアの文化的中心地でもある。11世紀には城が置かれ、13世紀からはモラビア辺境伯領の首都となった。18世紀には織物のマニュファクチュア(工場制手工業)が発展し、19世紀には機械化して繊維工業の中心地となり、「モラビアのマンチェスター」とよばれた。12、13世紀にはドイツ人の東方植民によって町はドイツ化したが、19世紀の工業化の過程でチェコ人が労働者として流入し、多数派となった。スピルベルグ城、聖ペトロ・パベル教会、遺伝学者メンデルや作曲家ヤナーチェクの過ごしたアウグスチン修道院などが残されている。市北郊のモラビア・カルストの鍾乳洞(しょうにゅうどう)は有名である。
[中田瑞穂]
建築家ミース・ファン・デル・ローエの1930年の作品「チュゲントハット邸」(ツゲンドハット邸、トゥゲントハット邸)が2001年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「ブルノのツゲンドハット邸」として世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。
[編集部]
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…更新世に人類が生存していなかったと断定するキュビエ説がまだ広く信じられていた当時としては,カトルファージュらの結論はまさに画期的ということができるが,これに類似する人骨がその後,ヨーロッパ,西アジア,北アフリカの,オーリニャックおよびマドレーヌ文化期もしくはそれに並行する後期旧石器時代の遺跡から相次いで発見され,それらがすべて新人に帰属することが明らかにされている。ヨーロッパにおける化石現生人類の主要な出土遺跡は,ベルギーのアンジ,フランスのラ・マドレーヌ,クロマニョン,ロージュリー・バス,ル・プラカール,コンブ・カペル,ソリュートレ,イギリスのギャリー・ヒル(2万2500年前),イタリアのグリマルディ,ドイツのオーベルカッセル,チェコのプシェドモスティ(2万6000年前),ブルノ,ロシアのコスチョンキ(1万4300年前),スンギル(2万2000年前)など,北欧を除く広範な地域に分布している。これらヨーロッパの化石現生人類は,時代的にも2万年近い幅があるので,その特徴は必ずしも一様でなく変異に富んでおり,かつてはクロマニョン型,シャンスラード型(シャンスラード人),グリマルディ型(グリマルディ人)の3類型に区分されていた。…
※「ブルノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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