ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブードゥー」の意味・わかりやすい解説
ブードゥー
Vodou; Voodoo; Vodun
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ハイチにみられる民間信仰で,キューバのサンテリーアやブラジルのマクンバ,カンドンブレとともに,アフリカの原始宗教とカトリックとが混交した宗教。フランスの植民地時代に西アフリカのダホメー(現,ベニン)から奴隷としてキューバに連れて来られたフォン族がもたらしたものであるが,彼らはその後支配者の強制するキリスト教と父祖伝来のブードゥー教とを巧みに融和させ,これを部族宗教から民族宗教に発展させた。1791年の奴隷反乱の際ブードゥーは黒人たちを決起させ,6年後世界で初めて黒人共和国ハイチが成立した。そして現在に至るまでハイチ国民の間に根強い信者をもっている。しかし全人口の7割以上が非識字大衆であるハイチの現状からすると,ブードゥーは呪術や魔術的色彩が強く,呪文によって病気の回復を求めたり,祭壇に動物をいけにえにささげたりする習慣がいまなお残っている。元大統領フランソア・デュバリエがブードゥーを利用して独裁政治を行った話は有名である。
→ウンバンダ
執筆者:神代 修
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…そしてキューバの一部で話されているニャニギスモは,スペイン語とヨルバ語の混合したものである。
[宗教]
一般にアフロ・アメリカの宗教という場合に挙げられるのは,ハイチのブードゥー,ブラジルのマクンバ(ウンバンダ),キューバのサンテリーアなどであるが,そのいずれもが西アフリカのフォン族やヨルバ族に起源を持つ原始宗教とカトリックとの混交宗教である。スペインやポルトガルの植民当局が植民政策の一つとして原住民インディオや黒人奴隷にカトリックへの改宗を強制したことはよく知られている。…
…黒人,混血の人種構成のために人種差別はみられないが,貧富の差がはなはだしいので,同一人種間でも階級対立が顕著である。宗教はカトリック80%,プロテスタント10%,その他10%であるが,カトリックとアフリカ原始宗教との混合宗教であるブードゥーが農村に広く分布している。ブードゥーはハイチにおいて大きな影響力をもっており,独立革命の前ぶれとなった1791年の奴隷反乱では,ブードゥーを信仰する奴隷たちが守護神を奉持して蜂起したし,1957年に大統領に選出されたフランソア・デュバリエは熱心なブードゥー教徒として知られている。…
…交易で繁栄したダホメー王国の住民であり,現在も活発に商業活動に従事し,市(いち)もよく発達している。フォン族のあいだにはボードゥン(中米ハイチで信仰されるブードゥーの起源)と総称される神々があるが,これは神格化された祖先であり,ふつうの祖先とは区別される。このパンテオンの頂点には創造神リサ・マウが位置し,その配下に天,地,雨などを支配する神々が連なった。…
…儀礼は秘儀的性格と反白人主義を強め,アフリカ要素の憑依(ひようい)現象の脱魂状態での恍惚感と呪術,さらにキリスト教の終末観や聖霊憑依感のなかでの慰めなどに共通に見いだされる。ハイチで盛んなブードゥー教もこの流れをくむ祭祀集団であり,キューバにはニャニーゴÑanigoという,荒々しい歌舞によってアフリカの神々が憑依する秘儀団があり,ブードゥーの神々と習合して複雑化している。ブラジルの黒人宗教も同じ傾向をもつが,なかでもサン・パウロ市に本部をもつウンバンダは1960年以降,都市中産階級に浸透し白人信徒を擁して反白人的色彩を稀薄化させている。…
※「ブードゥー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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