英語ではpreparationという。顕微鏡観察のために生体,鉱物などの試料を,スライドグラスとカバーグラスの間に封入したもの。試料が生きている生物体である場合は,浸透圧や溶質を適当に選んだ水溶液を封入剤とする。固定した生体の場合はなるべく薄い切片を作ってスライドグラスにはり着け,必要に応じて色素で染色するなどの処理を施したのち,浸透性がよく,ガラスに近い屈折率をもつ封入剤(たとえばグリセロール)で封入する。これらは一時的なプレパラートで,短時間の観察に適している。長期間にわたる保存や持運びを可能にするためには,揮発性で浸透性のよい溶媒(たとえばキシレン)で溶かした透明で安定でガラスに近い屈折率をもつ高分子物質(たとえばバルサム)を浸透させたのち,溶媒を揮発,固化させる。これを永久プレパラートとよぶ。
→顕微鏡
執筆者:佐藤 七郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
生物、鉱物を顕微鏡で観察するためにつくった標本をいう。原語は、ある種の生物体の処理された一部または全体の標本を意味する。また、英語ではpreparationという。普通、スライドガラスに試料をのせカバーガラスをかけてプレパラートをつくる。生物材料の場合、塗抹したり、押しつぶしたり、または切片にしたりして、スライドガラスとカバーガラスの間に材料の薄い層をつくり観察しやすくする。プレパラートには、水、グリセリン、固定染色液などを媒液として用いたもので長く保存のできない一時プレパラートと、材料を脱水しバルサムなどに封入したものである永久プレパラートとがある。かさの大きな材料は、普通は固定、脱水後パラフィンなどに包埋し、ミクロトームで切片としてスライドガラスにのせ加温により伸展してから染色し封入する。また脱水を行わず凍結した材料をクリオミクロトームで切片とすることもできる。連続切片を観察することにより、立体的形態を再構成することもできる。鉱物は研磨して薄片として偏光顕微鏡で観察する。化石などは、研磨や腐食などの表面処理を行ったのち、表面の凹凸を写し取ったレプリカ膜をつくり試料とする。なお、多数のプレパラートを整理、収納するためには、プレパラートボックスが用いられる。
[馬場昭次]
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