ギリシア神話の海の老神。ネレウスと同じ「海の老人」とよばれ、預言の力と自由に姿を変える力とを備えていた。海の家畜アザラシの番をする牧人として、ポセイドンの配下にあった。ホメロスの『オデュッセイア』によれば、メネラオスはトロヤからの帰路、暴風にあってエジプトのファロス島に漂着し、その島へ現れるプロテウスから未来を聞き出すために、彼をつかまえようとした。プロテウスがライオン、大蛇、豹(ひょう)、猪(いのしし)、水、大木と次々に変身して逃れるのをメネラオスが離さなかったため、プロテウスはあきらめて本来の姿に戻り、帰国の道を教え、遠征した諸将の帰国のありさまを語って聞かせた。おそらく彼は、航海者の空想から生み出された親しみやすい海神と考えられる。後のヘロドトスやエウリピデスによれば、彼はエジプト王となり、スパルタからパリスとともに出奔して漂着したヘレネを保護したとされる。
[伊藤照夫]
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