プロトロンビン(読み)ぷろとろんびん(英語表記)prothrombin

翻訳|prothrombin

精選版 日本国語大辞典 「プロトロンビン」の意味・読み・例文・類語

プロトロンビン

〘名〙 (prothrombin) 血漿中に含まれる血液凝固因子一つ肝臓で生合成され、トロンボプラスチンなどの作用で活性トロンビンとなる。トロンボゲン。

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デジタル大辞泉 「プロトロンビン」の意味・読み・例文・類語

プロトロンビン(prothrombin)

血漿中にある、血液凝固の第2因子。肝臓で生合成され、トロンボプラスチンカルシウムイオンの作用を受けて活性型のトロンビンとなる。トロンボーゲン。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「プロトロンビン」の意味・わかりやすい解説

プロトロンビン
ぷろとろんびん
prothrombin

血漿タンパク質(けっしょうたんぱくしつ)の一つ。血液凝固の第Ⅱ因子で、トロンビンの前駆体セリンプロテアーゼタンパク分解酵素)の一つである。肝臓でつくられ、電気泳動的にはα2-グロブリン分画にあり、コーン分画Ⅲ-2に含まれる。なお、コーン分画法は、アメリカの物理化学者コーンEdwin Joseph Cohn(1892―1953)が確立した、いろいろな血漿タンパク質を分離する方法であるが、現在は使われていない。ヒト血漿1リットル中に0.15~0.2グラム含まれる。ビタミンK不足や肝障害で減少する。分子量約6万9000~7万2000で、1976年に581残基のアミノ酸配列が決定された。アミノ末端近くに4-またはγ(ガンマ)-カルボキシグルタミン酸が10個あり、カルシウムCa2+が結合しており、リン脂質二重層(細胞膜の基本構造体)での活性化促進反応に関与している。3個のアスパラギンには糖鎖グルコースなどの糖がいくつかつながったもの)がついている。

 血液凝固の第二相において、第Ⅴ因子、リン脂質、カルシウムイオンの共存下で、活性化された第Ⅹ因子がプロトロンビン分子に作用してアミノ末端から273番目までのペプチドを切り離し、さらに322番目のアルギニンと323番目のロイシンの間のペプチド結合(Arg322-Leu323)を切って、分子量約3万7000のα-トロンビンとなる。N末端近くには約10残基の4-またはγ-カルボキシグルタミン酸があり、カルシウムイオンを結合している。トロンビンは第Ⅰ因子であるフィブリノゲン中のアルギニンとグリシンの間のペプチド結合を切断してフィブリノペプチドを遊離し、フィブリンへ変換する。

[野村晃司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プロトロンビン」の意味・わかりやすい解説

プロトロンビン
prothrombin

トロンボーゲンあるいはトロンビノーゲンともいう。酵素蛋白質の一種で,トロンビンの前段階にある非活性物質で,リン脂質によって活性化されトロンビンになる。血漿のβ-グロブリン分画中に存在し,肝臓で生成されるが,この際にビタミンKが必須である。

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栄養・生化学辞典 「プロトロンビン」の解説

プロトロンビン

 血液凝固因子であるトロンビンの前駆体で,特異的なプロテアーゼによって活性化されて,プロテアーゼであるトロンビンを生じる.

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世界大百科事典(旧版)内のプロトロンビンの言及

【血液凝固】より

… 内因系の血液凝固は,XII因子,XI因子,プレカリクレインが固相に吸着されて,固相上で活性化されることによって開始される。血液凝固の作用が開始されると,ひきつづいて各因子による連鎖反応が起こり,形成された複合体にII因子(プロトロンビン)が結合して活性化され,活性化II因子(トロンビン)がフィブリノーゲンに働きフィブリンに転換する。フィブリンは自然に重合を起こし,フィブリン網を形成し,血液はゲル化する。…

※「プロトロンビン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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