翻訳|fibrin
繊維素(線維素)ともいう。血液凝固において、血漿(けっしょう)中の血液凝固第Ⅰ因子であるフィブリノゲン(Aα(アルファ)・Bβ(ベータ)・γ(ガンマ))2にトロンビンが作用してフィブリノペプチドAおよびBのそれぞれアルギニンArg16-グリシンGly17(Aα)とArg14-Gly15(Bβ)を切り離した残りが難溶性のフィブリンモノマー(αβγ)2である。これがさらに凝固因子ⅩⅢaであるトランスグルタミナーゼの作用によってγ-γ間、次にα-α間にイソペプチド架橋ができ、不溶性のフィブリンポリマーとなり、網状になって血球を絡め、凝血塊となる。α鎖ではフィブロネクチンやα2-プラスミンインヒビターもⅩⅢaによって架橋される。血球を除いた海綿状フィブリンは外科手術の際、止血用や切除部分の充填(じゅうてん)用に使われる。フィブリンは、血清中のセリンプロテアーゼの一つであるプラスミンによって徐々に分解される。
[野村晃司]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
フィブリノーゲン-フィブリン変換過程は血液凝固反応の重要な過程であり,酵素トロンビンによって反応は進行する.フィブリノーゲンはα,β,γ鎖各2本ずつの計6本のポリペプチド鎖で構成されているが,トロンビンの加水分解触媒作用によって,αおよびβ鎖のN末端付近に存在する-Arg-Gly-結合を切断し,4本のペプチドをフィブリノーゲン分子より遊離する.残りの部分をフィブリンというが,重合しやすくフィブリン重合体を生成する.血液凝固過程ではさらにフィブリン安定化因子が作用し,尿素あるいはモノクロロ酢酸に対し,不溶性のフィブリン塊を形成する.人工的につくられたフィブリン塊あるいは膜は医療材料として使用されるほか,写真,皮革工業に利用される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…血管が破れて内皮細胞の下にある膠原(こうげん)繊維や周囲の組織が露出すると,まず血小板が付着し,つぎつぎと集合して血小板塊をつくり血管の破れた部位に栓をする。続いて血漿の中にある凝固因子(12種類)が膠原繊維との接触や組織液の混入により活性化されて連鎖反応をおこし,最終的には可溶性のフィブリノーゲンが不溶性のフィブリン(繊維素)となって網目構造が形成され,強固な血液凝集塊(血栓)をつくって出血を止める。しばらくして内皮細胞が再生し血管壁の修復が完了すると,血漿に含まれている繊維素溶解物質が活性化され,役割を終えた血栓を溶かし(繊維素溶解),血液の流れが正常状態に戻る。…
…II,VII,IX,Xの4因子は,ビタミンKを必要とする酵素系によって,肝臓細胞で産生される(これをビタミンK依存性凝固因子という)。
[血液凝固のしくみ]
血液凝固機序は,これら一連のタンパク質分解酵素の活性化の連鎖反応から成立しており,最終的に繊維状の安定したフィブリン網が析出して,血液がゲル化することによって終了する。連鎖反応の各段階を経るごとに反応は増幅され,わずかな凝固開始の刺激も血液凝固を完了させるように働く機構になっている。…
※「フィブリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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