ドイツの物理学者。ルーマニアのアラド生まれ。1978年に当時の西ドイツに移住。1981年にハイデルベルク大学入学、1990年に同大学で物理学の博士号を取得した。論文のタイトルは「共焦点顕微鏡による透過微細構造のイメージング」であり、その後の研究実績に結び付いた。その後ヘルは、共焦点顕微鏡の軸方向の解像度について研究を重ねた。
1991年からハイデルベルクのヨーロッパ分子生物学研究所で研究し、そこで解像度の高い顕微鏡の開発に取り組んだ。1993年からフィンランドのトゥルク大学医学物理部門のリーダーとなり、レーザー光を使って分子を見ることができる超高解像度のSTED(stimulated emission depletion)顕微鏡の原理を発明した。この業績で細胞内部の構造を従来の蛍光顕微鏡よりはるかに高い感度で数十ナノメートルまで観察できるようになり、難病の仕組みの研究に貢献した。2002年から、生物化学マックス・プランク研究所の所長になりナノバイオ化学部門を創設。2003年からハイデルベルク大学物理天文学部の教授となった。2014年「超高解像度の蛍光顕微鏡の開発」の業績で、ウィリアム・モーナー、エリック・ベツィグとともにノーベル化学賞を受賞した。
[馬場錬成 2015年2月17日]
北欧神話の冥府(めいふ)の女王。またその支配する死者の国もヘルとよばれる。ロキとアングルボザの娘で、主神オーディンによって冥界に投げ込まれた。ヘルは、なかば青色でなかば人肌色をした険しく恐ろしい顔つきをしている。一方、死者の国ヘルは、地下の暗い霧に覆われた寒冷の地にあり、そばをギョル川が流れ、大きな門と高い塀とを備えた館(やかた)とされ、病気や老齢で死んだ者を迎える所である。ヘルはゲルマン語で「隠す」を意味する。
[谷口幸男]
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北欧神話の冥府の女王。また彼女の支配する死者の国も同じくヘルと呼ばれる。ヘルはエッダによると,ロキと女巨人アングルボザの3番目の子で,オーディンにより冥府に投げ込まれ,病気や老齢で死んだ者たちにその住居を割り当てることになった。ヘルは体の半分が青色で半分は人肌色をして,けわしく恐ろしい顔をしている。ヘルという語はゲルマン語で〈隠す〉の意で,元来は死者の国を表した。冥府ヘルは霧におおわれた暗い地下の寒冷の地にあり,そばにギョル川が流れ,橋がかかり,橋のたもとに橋の番人がいる。橋を渡ると大きな門と高い塀をもつ館があり,それが女王の住むヘルとされる。館の内部については乏しい描写しか伝えられていないが,現世の館に似ており,貴族の地下の墓室のイメージが反映しているように思われる。オーディンは死んだ巫女から未来のことを聞くため訪れ,女神フリッグの命によって,ヘルモーズもフリッグの子バルドルを取り戻しにこのヘルに赴いている。
執筆者:谷口 幸男
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…〈冥府の靴〉というものをはかせたり,貨幣を一個もたせるという例もある。霧におおわれた暗い地下の寒冷の地にあるとされる冥府ヘルのイメージは土葬の風習から由来していることは明らかである。このヘルは後にキリスト教が入ってきてから〈地獄〉というイメージが強くなっただけで,本来は贖罪(しよくざい)や報復の場所と考えられたわけではない。…
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