ベンバ族(読み)ベンバぞく(英語表記)Bemba

改訂新版 世界大百科事典 「ベンバ族」の意味・わかりやすい解説

ベンバ族 (ベンバぞく)
Bemba

アフリカ中南部,ザンビア共和国北東部の高原地帯に居住する農耕民。人口約40万。ベンバ語はバントゥー語に属し,ザンビアでも有力な言語で,国語の一つになっている。伝承によると,ベンバ族は今日のコンゴ民主共和国のシャバ地方に起源をもち,ルバ族末裔であって,約200年ほど前に初めてこの地に移住してきたという。この最初の移住集団の子孫が,首長を出す有力なクランを構成している。19世紀には,パラマウントチーフ(最高首長)を擁する強大な王国を形成し,周辺の諸部族を支配したが,その軍事力はアラブとの交易により手に入れた鉄砲に依存していた。

 ベンバ族の社会は母系制をとることで知られており,出自は母方を通じて認められ,リネージやクランなどの出自集団も母系をとる。結婚後の居住も妻方居住であり,一般に一夫多妻は行われない。地域集団としての村落は,村長母系出自集団を中心とした血縁集団でもある。現在,ベンバ族の成人男子の多くは,南部の銅生産地帯(コッパー・ベルト)の鉱山や都市で働いている。一方,村落部では伝統的な自給農耕が行われている。ベンバ族の農業は,シコクビエ,モロコシ,トウジンビエなどアフリカ固有の雑穀栽培が重要な位置を占めてきた。さらに,トウモロコシキャッサバなども広く栽培されつつあり,また,ワタのような商品作物も導入され,農業の近代化が図られつつある。ベンバ族の農業技術のうえで特色があるのは,チテメネ・システムという焼畑農耕である。これは,森林の木にのぼって枝を切り払い,その枝や葉を耕地に集めて火を放ち,貧弱な土壌肥料を与える方式である。ベンバ族の居住するサバンナツェツェバエの分布域であり,そのため牛は飼養しない。したがって,結婚に際して婚資(花嫁代償)に牛が支払われず,役務を提供する婚資労働の制度が行われ,伝統的な農業形態を支えてきた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベンバ族」の意味・わかりやすい解説

ベンバ族
ベンバぞく
Bemba

バベンバ族 Babemba,アウェンバ族 Awembaともいう。母系の中央バンツー語系諸族のうち最大の民族。ザンビア北東部の高原とその周辺に住み,人口は 200万以上と推定される。ルバ帝国の末裔と考えられる。神官でもある王の統治する中央集権的国家を形成し,各地方は王族が首長となって支配し,貴族,平民の階級に分れる。婚資の制度があり,複婚的合同家族は,結婚当初は妻方居住制をとる。地域性をもたない 40のトーテム的母系氏族が外婚単位をなす。雑穀類の焼畑耕作を営み,30~50戸の小屋から成る村は4~5年で移動する。 1960~70年代には,男性の多くが南方の鉱山地帯へ出稼ぎに出た。

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