ペテロ(英語表記)Pétros; Petrus

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ペテロ
Pétros; Petrus

[生]?
[没]64頃. ローマ
十二使徒の一人で,初期キリスト教の指導者。聖人。本名 Simeon; Simōn。初代教皇(在位 ?~64頃)とされる。もとはガリラヤ湖の湖畔ベツサイダの漁師でバプテスマ(洗礼者)のヨハネ弟子だったが,ヨハネがイエス・キリストを神の子と認めた翌日,兄アンデレを通じイエスの弟子となった。ペテロの名は,イエスから与えられた名ケパ(アラム語で「岩」の意)のギリシア語訳に由来する。イエスを神の子キリストであると告白し,イエスにより十二使徒中の首位権を認められた。ゼベダイの子ヤコブや使徒ヨハネとともに最も愛された弟子だったが,性格は直情的で動揺しやすかった。イエスが捕えられたとき,師との関係を否認したが,イエスはこれを許した。イエスの復活(→キリストの復活)の最初の証人となり,教会の中心的指導者として活躍。ローマでの布教に際し皇帝ネロの迫害にあって殉教したとされる。祝日 6月29日。

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デジタル大辞泉の解説

ペテロ(Petros)

[?~64ころ]イエス=キリスト十二使徒中の第一人者。本名、シモン(Simon)。ガリラヤの漁師であったがイエスの弟子となり、特に信頼されてペテロ(岩、すなわち教会の礎石の意)とよばれ、天国の鍵を託されたという。イエスの死後、パレスチナ・小アジア・ローマで伝道し、ネロ帝の迫害により殉教したという。ローマ教会初代の教皇とされる。

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百科事典マイペディアの解説

ペテロ

初代キリスト教,イエスの弟子たちの筆頭とされる人物。1世紀中葉に活動。生没年不詳。ヘブライ名シメオン,アラム名ケファ(後者から〈岩〉の意のギリシア名ペテロ(ペトロス)が与えられた)。ガリラヤの漁師の出身で,パウロとともにローマで殉教したと伝えられる。カトリック教会ではイエスの後継者,初代のローマ司教(教皇)として尊崇する。ペテロの名が冠された新約聖書中の2通の書簡(《ペテロの手紙》)は偽作とする説が有力。
→関連項目サン・ピエトロ大聖堂使徒行伝

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世界大百科事典 第2版の解説

ペテロ【Peter】

1世紀半ばの,初代キリスト教におけるイエスの弟子のうち最重要の人物。ヘブライ名はシメオン(《使徒行伝》15:14),アラム名はケファで,これが〈岩〉を意味するところからギリシア名のペテロ(正しくはペトロスPetrosで,〈岩〉をさすギリシア語のペトラが男性形化されたもの)が与えられた。《マタイによる福音書》16章17~19節によれば,イエス自身によってこの名が与えられたとされているが,イエスの呼びかけの言葉の中にペテロの名がまったく出ないため,イエスの死後のペテロの権威化とも考えられる。

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大辞林 第三版の解説

ペテロ【Petros】

イエスの弟子。ガリラヤの漁師であったが、イエスに選ばれ最初の弟子となる。イエスの死後、エルサレム教会の基礎を固め福音の宣教に尽力。ローマでネロの迫害により殉教したという。十二弟子の筆頭とされ、カトリック教会では初代教皇とされる。ペトロ。ペトルス。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ペテロ
ぺてろ
Petros
(?―60ころ)

イエスの十二使徒の筆頭。教会の最初の指導者。『新約聖書』の「福音書(ふくいんしょ)」および「使徒行伝(ぎょうでん)」に彼に関する記述があるが、かならずしも史的に厳密ではない。『新約聖書』のなかの「ペテロの第一、第二の手紙」は彼のものではない。彼の元来の名はシメオン(シモン)。初めガリラヤで漁業に従事していたが、同地方を巡回していたイエスに出会い、その群れに加わった。イエスの死後まもなく、一種の幻視体験で復活者イエスに接したことから、イエスに対する信頼を新たにし、他の弟子たちの先頭にたってエルサレム教会を組織し、伝道に励んだ。このときから彼は、教会の土台としての岩という意味で、ペテロ(ギリシア語の岩=ペトラを男性化した名前。アラム語ではケパ)との呼び名を得たものと思われる。イエスに傾倒していた彼は律法に対して比較的自由な立場をとったため、ユダヤ王アグリッパ1世の迫害にあい、それ以後はエルサレム教会を離れて、ローマ帝国東半の各地で主としてユダヤ人に伝道した。最後はローマで活動し、ネロ皇帝の下で殉教したと伝えられる。彼はどちらかといえば素朴な人物であったらしく、思想的に大きい影響を残した形跡はない。しかし、イエスにより教会の岩とされ、天国の鍵(かぎ)を授けられた(「マタイ伝福音書」16章)という理由から、彼は古代教会以来、ことにローマ・カトリック教会で、使徒たちのなかでも特別に重要視された。ローマ教皇は彼の後継者とされている。[佐竹 明]
『O・クルマン著、荒井献訳『ペテロ 弟子・使徒・殉教者』(1965・新教出版社)』

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世界大百科事典内のペテロの言及

【鍵】より

…新中国においては,主婦の〈鍵の権力〉,つまりは姑の権威的地位の批判が行われている。【仁井田 陞】 キリスト教では,イエス・キリストがペテロに鍵を与えて〈われ天国の鍵をなんじに与えん〉(《マタイによる福音書》16:19)と述べたことから,ペテロは天国の門の番人といわれ,2個の鍵を手にした姿に描かれている。この2個の鍵は,ペテロの後継者であるローマ教皇のしるしとなり,一つは金,一つは銀で作られ,英語ではクロス・キーズcross keysと呼ぶ十字架の形を表し,この歴代の教皇にキリスト教徒最高の権威が与えられていることを,〈鍵の力〉(天国の扉の開閉権)が与えられているという。…

【教皇権】より

…使徒ペテロの後継者・ローマ司教としての教皇がもつ,ローマ・カトリック教会内の最高司牧権。カトリックの教理によれば,ペテロがキリストから,使徒団の中で特別の使命と権限を受けたことは,3テキスト(《マタイによる福音書》16:13~19,《ルカによる福音書》22:31~32,《ヨハネによる福音書》21:15~17)の総合的理解から証明される。…

【キリスト教】より

…すなわち,一方でパウロは〈人は皆,上に立つ権威に従うべきです。神に由来しない権威はなく,今ある権威はすべて神によって立てられたものです〉(《ローマ人への手紙》13:1)と説き,他方ペテロは自分と使徒たちの名において〈人間に従うよりも神に従うべきです〉(《使徒行伝》5:29)と宣言する。市民的義務と神への忠実との衝突は,政治権力があからさまに宗教の領域へ介入する場合はいうまでもないとして,市民の人格的権利がおかされる場合にはいつでもなんらかのしかたで起こる。…

【言語遊戯】より

… 西洋でも,ホメロス以来,言語遊戯の伝統は長い。キリストが第1の弟子に向かって言った〈汝はペテロなり。われこの岩の上にわが教会を建てん〉(《マタイによる福音書》16:18)という言葉は,〈岩〉を意味する名前ペテロに懸けてある。…

【使徒】より

聖職者【青野 太潮】
[図像]
 使徒の大部分は個人的特徴を備えず,青年から壮・老年に至るさまざまなタイプに表される。しかし,ペテロ,パウロ,ヨハネ,アンデレ,イエスの兄弟ヤコブらは,多少時代,地域によって異なるが,他から区別して個性的に表現された。なかでも使徒の頭(かしら)とされる前2者は,初期キリスト教時代からペテロの白髪の巻毛と白いあごひげ,パウロのはげ上がった前額部と鋭い目つき,黒い髪とひげによって区別された。…

【シモン】より

…複数の同名人物が知られているが,おもなものは,(1)イスカリオテのユダの父,(2)イエスの兄弟,(3)十二使徒の一人で,熱心党のシモンと呼ばれる人,(4)クレネ人(びと)で,ゴルゴタに向かうイエスの十字架を無理に負わされた人,(5)魔術師シモン(シモン・マグス)などである。なお,イエスに出会う前のペテロもシモンと呼ばれ,シモン・ペテロと二重の名が付されることもある。【編集部】。…

【テンピェット】より

…小神殿を意味するイタリア語で,古代ローマ時代に多くの作例をみるが,固有名詞としては,ローマにあるブラマンテ作の円形プランの殉教記念堂をさす。高さ約14mのこの小堂は,スペイン王フェルナンド2世と后イサベルの依頼により,1502年ペテロの殉教地と信じられていたローマのサン・ピエトロ・イン・モントリオS.Pietro in Montorio修道院の中庭に建てられた。地下祭室,周柱式内陣,高い鼓胴部に支えられた球殻の3部分からなり,これらはそれぞれ地下墳墓,地上の教会,天上の教会を象徴する。…

【パウロ】より

…持物は書物あるいは巻物,また剣。3~4世紀には,パウロとペテロを並べた肖像が,おもにローマ市で流行したらしい(メトロポリタン美術館蔵のガラス器断片,4世紀)。また同じころから,パウロとペテロがキリストから律法を受けとる〈律法の授与〉の図像が,ローマ,旧サン・ピエトロ大聖堂のモザイク(現存せず)やローマ,サンタ・コスタンツァ廟のモザイク(4世紀前半)などに多く表された。…

【ペテロ行伝】より

…新約外典の一つ。ペテロシモン・マグスとの戦いにおける勝利,クオ・ウァディス物語,そしてペテロの逆十字架の処刑などの内容を持つ。2世紀末に小アジアで執筆されたもので,巷間の伝承を集めた信徒のための読物。…

【ペテロの手紙】より

…使徒ペテロによって書かれたとされている新約聖書中の二つの手紙。しかし大多数の学者は両者ともにペテロの真正の手紙とは考えず,《第1の手紙》は1世紀末,《第2の手紙》は2世紀前半に(したがって新約聖書中最も遅く)成立したとみなしている。…

※「ペテロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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