ホモシスチン尿症

家庭医学館の解説

ほもしすちんにょうしょう【ホモシスチン尿症 Homocystinuria】

[どんな病気か]
 メチオニンは、体内で合成することができず、食品中に含まれるものを摂取して補わなければならない必須(ひっす)アミノ酸(さん)の1つで、シスタチオニン合成酵素(ごうせいこうそ)のはたらきによって、ホモシステインという物質に変換され、その後、システインとシスチンにつくり変えられます。
 この酵素が生まれつき欠けていると、血液中のホモシステインやメチオニンの量が増え、ホモシスチンという物質が尿中に排泄(はいせつ)されるようになります。これが、ホモシスチン尿症です。
 この病気は、ある種の薬の使用で後天的にもおこりますが、先天性のものは常染色体劣性遺伝(じょうせんしょくたいれっせいいでん)し、新生児マススクリーニングで100万人に1人の割合で発見されます。
[症状]
 目、骨格、中枢神経(ちゅうすうしんけい)、血管系に障害がおこります。
 目では、2歳ごろから水晶体(すいしょうたい)のずれがおこったり、近視(きんし)となります。
 骨格では、手足や手指が長くなります。20歳すぎから骨粗鬆症(こつそしょうしょう)がおこり、骨がもろくなります。
 中枢神経系では、1~2歳の間に発育・発達の遅れが目立つようになり、歩き始めが遅れたり、よたよた歩きになったりします。約50%にけいれんや知能障害がみられます。
 血管系では、血栓(けっせん)(血のかたまり)がつまる脳梗塞(のうこうそく)や肺塞栓(はいそくせん)がおこり、死因になることが多いといわれています。
[治療]
 メチオニンを制限し、シスチンを多く含む食事療法を優先して行ないます。ベタインという薬が有効なことが最近わかりました。
 ビタミンB6の大量使用が有効なこともありますが、専門医による慎重な治療が必要です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ホモシスチンにょうしょう【ホモシスチン尿症 homocystinuria】

硫黄を含むアミノ酸(メチオニン)の代謝障害により,尿中に大量のホモシスチンが排出される遺伝病。知能障害,水晶体脱臼,脊柱側彎(そくわん),クモ状指,骨の脆弱(ぜいじやく)性を示し,血栓を起こしやすい。先天性代謝異常【中村 了正】

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

内科学 第10版の解説

ホモシスチン尿症(先天性アミノ酸・尿素回路および有機酸代謝異常症)

(2)ホモシスチン尿症(homo­cystinuria)(図13-3-11)
定義・概念
 メチオニンの代謝経路において,中間代謝産物のホモシスチンがシスタチオニンに変換されず,体内に多量に蓄積され尿中へ排出される常染色体劣性遺伝病である.発見率は1/176000である.出生時には無症状であるが,乳児期以降に発育障害,知的障害,水晶体偏位による視力低下・緑内障などを引き起こす.病態生理 シスタチオニンβ-シンターゼ(CBS)の欠損によるものが大部分を占める.CBSの遺伝子座は21q22.3で全長30kb,23エクソンからなり,現在では100種以上の変異が同定されている.増加したホモシステインはホモシスチンに変換され尿中に排泄され,また一部はメチオニン合成酵素(MS)によりメチオニンに変換されて,蛋白合成に用いられる.CBSの欠損による典型的なタイプ以外に,MSの欠損あるいは補酵素としてのビタミンB12代謝異常,葉酸代謝異常によっても生じる.典型的なCBS欠損症は,水晶体脱臼,中枢神経系障害(知能障害,痙攣)全身の動静脈血栓症,骨格異常(Marfan症候群様体型,骨粗鬆症)を起こす. 血中ホモシステイン高値は,血管内皮障害,血管平滑筋増殖促進,血小板凝集亢進を起こし,動脈硬化などの生活習慣病の原因として注目されている.また,一般健常者の血栓性疾患においても,血清ホモシステイン濃度が高値であることが知られている.
鑑別診断
 新生児マススクリーニングでは血中メチオニンの上昇(1~2 mg/dL以上)として把握される.肝疾患や蛋白質を多くとったときに高メチオニン血症がみられる.ほかのメチオニンの上昇する疾患との鑑別には,血漿および尿中アミノ酸分析を行う.ホモシステインは血漿蛋白と容易に結合するため,血漿アミノ酸分析ではホモスチン尿症患者でもホモシステインの上昇を認めないこともある.確定診断のためには,蛋白に結合したホモシステインを含んだ血中総ホモシステインの測定を行う.治療 メチオニンを制限し,不足するシスチンを添加した食事療法を一生継続して行う.乳児ではメチオニンの制限のために治療用メチオニン除去ミルクを使用するが,メチオニンは成長に欠かせない必須アミノ酸であるため低メチオニンミルクに切り替えたり,通常の乳児用ミルクと併用したりして摂取量をコントロールする.また,ホモシステインをメチオニンへ還元する際の補助となるビタミンB6やビタミンB12,葉酸を併用して血中ホモシステイン濃度を下げるビタミン療法を行うこともある.[中屋 豊]
■文献
Behrman RE eds: Nelson Textbook of Pediatirics, 17th ed, pp. 397-398, 2396-2427, Elsevier, 2006.
Saheki T, Kobayashi K, et al: Reduced carbohydrate intake in citrin-deficient subjects. J Inherit Metab Dis, 31: 386-394, 2006.

ホモシスチン尿症(アミノ酸代謝異常)

(3)ホモシスチン尿症(homocystinuria)
病因
 ホモシスチン尿症は,メチオニン代謝産物であるホモシスチンが血中に蓄積し,尿中に大量に排泄される常染色体劣性遺伝性アミノ酸代謝異常症である【⇨図13-3-11】.本症には,Ⅰ型,Ⅱ型,Ⅲ型が知られ,Ⅰ型はホモシスチンをシスタチオニンに変換するシスタチオニン合成酵素(遺伝子:21番染色体長腕)欠損,Ⅱ型はホモシスチンをメチオニンに再メチル化する5-メチルテトラヒドロ葉酸-ホモシスチン-メチルトランスフェラーゼ欠損,Ⅲ型はホモシスチンをメチオニンに再メチル化するのに必要な5-メチルテトラヒドロ葉酸を生成するメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(遺伝子:1番染色体短腕)欠損によるホモシスチン尿症がある【⇨13-3-4)】.
神経症状
 Ⅰ型は古典型ともいわれ,多くは3歳以後に,水晶体亜脱臼にて発見される.知的障害は進行性で70%にみられ,精神症状は50%以上,痙攣は20%に観察される.Marfan症候群様の骨格異常があり,大・小血管の血栓・塞栓が発生する.約40%は,ビタミンB6大量投与が有効(ビタミンB6反応型)である.
 Ⅱ型は,生後数カ月頃から嘔吐,哺乳不良,嗜眠,筋緊張低下,発達遅滞,巨赤芽球性貧血などを呈する. Ⅲ型は,酵素欠損の程度により臨床症状の重症度に差がある.完全欠損例は,新生児期に無呼吸発作,ミオクローヌス痙攣があり,昏睡から死に至ることが多い.部分欠損例は,慢性的に経過し,知的障害,痙攣,小頭症,筋緊張亢進,四肢強直などをみる.[青木継稔]
■文献
Behrman RE, Kliegman RM, et al eds: Nelson Textbook of Pediatrics, 19th ed, WB Saunders, Philadelphia, 2011.Scriber CR, Beaudt AL, et al eds: The Metabolic and Molecular Basis of Inherited Disease, 8th ed, McGraw-Hill, New York, 2001.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

世界大百科事典内のホモシスチン尿症の言及

【先天性代謝異常】より

…(1)糖質代謝異常 糖原病ガラクトース血症など生体のエネルギー源であるブドウ糖の供給障害が中心である。(2)アミノ酸代謝異常 タンパク質が分解吸収され,再合成して利用される過程の障害で,フェニルケトン尿症楓糖尿症ホモシスチン尿症などがある。(3)中性脂肪代謝異常 血漿中の脂肪の増加,組織への沈着が起こる。…

※「ホモシスチン尿症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

日米安全保障条約

1951年9月8日に対日講和条約と同時に署名された「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」Security Treaty between Japan and the United States ...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android