改訂新版 世界大百科事典 「ポルトマン」の意味・わかりやすい解説
ポルトマン
Adolf Portmann
生没年:1897-1982
スイスの生物学者で思想家。生涯のほとんどを生地バーゼルで過ごし,1931年より長く母校バーゼル大学の教授。動物界の広い範囲にわたる比較形態学,発生学,行動学の分野で独自的かつ先駆的な研究をした。その成果をもとに人間学の生物学的基礎づけに進み,著作《人間はどこまで動物かBiologische Fragmente zu einer Lehre vom Menschen》(1944)で教育学などに大きな影響を与えた。また精神や芸術と科学との関係について考察し,科学の立場に即しつつしかも幅広い世界観の重要性を強調した。ゲーテの生物学の研究における第一人者としても知られる。宗教と心理学など諸学問の接点をもとめて創立されたエラノス会議の主要な会員で,C.G.ユングらと交際があった。上記のほか《Biologie und Geist》(1956)などの編集,比較形態学の教科書,生涯を回顧した《An den Grenzen des Wissens》(1974)などの著作がある。
執筆者:八杉 龍一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報