翻訳|microcapsule
数μm~数百μm程度の微視的な大きさに物質を包みこむ微小な容器をいう。物質をマイクロカプセルに内包すること(マイクロカプセル化)の目的は,(1)液体を包みこむことによって粉体状にして取扱いを容易にしたり,(2)包みこんだ物質が徐々に放出されることを利用してその放出の仕方をコントロールしたり,(3)そのままでは互いに反応する物質をマイクロカプセル化して隔離したうえで混合し,必要に応じて反応させるようにしたり,(4)揮発しやすい物質を包みこんで揮発しないようにする,などである。用途としては,医薬品,色素,染料,食品,および食品添加物,接着剤,洗剤,写真用薬品などに利用される。
医薬品への利用は代表的な例の一つで,医薬品をマイクロカプセルに内包することによって,その放出を制御することをおもな目的としている。ふつう,医薬品を投与すると体内での濃度が増大するが,医薬品が体内で代謝を受けたりそのまま排出されたりするので,比較的短い時間のうちに濃度は低下してしまう。しかし,有効な治療のためには,長い時間にわたって一定の濃度が保たれることが望まれる。医薬品をマイクロカプセル化すると,マイクロカプセルを通じての拡散,放出やマイクロカプセルがゆっくりと分解することのために,この目的がある程度達せられる。何種類かの医薬品を同時に投与すると有効であるが,あらかじめ直接混合しておくことはできないような場合にも,マイクロカプセル化は有効である。
感圧複写紙,すなわち筆記やタイプの際に加わる圧力によって複写をとる紙にも,マイクロカプセルが利用されている。これは,それぞれでは無色であるが混合すると互いに反応して発色するような2種類の化合物を利用するもので,一方の化合物をマイクロカプセル化し,複写の際上側に使う紙の裏面にぬってある。下側に使う紙の表面にはもう一方の化合物がぬってあり,圧力がかかるとマイクロカプセルがこわれ,その部分だけ反応が起こって発色する。
マイクロカプセルの材料には,ゼラチン,カゼイン,アルブミンなどの水溶性タンパク質,アラビアゴム,寒天,アルギン酸ナトリウム,セルロース誘導体などの炭水化物や,ポリエチレンスルホン酸,ビニル化合物と無水フタル酸の共重合体などの合成高分子が用いられる。この中でゼラチンは,安価であり,またマイクロカプセルの調製が便利にできるので,ひろく用いられている。
マイクロカプセル化の方法にはいろいろあるが,化学的および物理化学的方法の例としては次のようなものがある。(1)相分離法 上記のような高分子物質の水溶液が微視的に濃度の異なる2相に分離することを利用するもの。包みこむ物質をこの系に共存させ,濃度の高いほうの微小相にとりこませ沈殿させることによって,その物質を内包したマイクロカプセルを得る。(2)界面重合法 互いに混合しない2種の溶媒のそれぞれに,互いに反応して高分子を生成するような原料を溶かすと両溶媒の界面で反応が起こって高分子が生成することを利用するもの。内包させる物質をこのような系に共存させてはげしくかきまぜながら反応させると,かきまぜによって生じた微小な界面で高分子が生成する際,その物質がとりこまれてマイクロカプセルが得られる。
執筆者:井上 祥平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
医薬品,色素,香料などを包み込むための微小容器(約5~300 μm).すなわち,
(1)液体を見掛け上,固体にして粉体化する,
(2)揮発物質を不揮発化する,
(3)反応性物質を不活性化し反応成分どうしを混合する,
(4)物質粒子の表面を被膜化することにより内包物の放出をコントロールする,
などの目的に用いられる.使用例としては,感圧複写紙,医薬品(アスピリンのエチルセルロースカプセルによる時限粒(time pill)化),香料,オイルカプセル,繊維のポリエチレンカプセル,接着剤,色素カプセル,液晶物質カプセル,カプセル化肥料などがある.マイクロカプセル化法としては,化学的方法,物理化学的方法,および物理的方法に大別される.カプセル化の手順としては,
(1)カプセル化媒体中に芯(しん)物質を微粒子状に分散させ,
(2)この系に壁膜物質を導入し,
(3)なんらかの方法で壁膜物質を芯物質粒子の周囲に集合,沈積,包囲させてカプセル壁を形成する.さらに,
(4)カプセル壁はそのままでは不安定なので,物理的または化学的方法によって強化する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新