マイクロカプセル(その他表記)microcapsule

翻訳|microcapsule

デジタル大辞泉 「マイクロカプセル」の意味・読み・例文・類語

マイクロカプセル(microcapsule)

粒径数~数百ミクロンの微小なカプセル剤。微細な物質を核としてゼラチンポリビニルアルコールなどの高分子化合物で被覆したもの。膜に選択的な透過性があり、条件に応じて内包物を放出させる。

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改訂新版 世界大百科事典 「マイクロカプセル」の意味・わかりやすい解説

マイクロカプセル
microcapsule

数μm~数百μm程度の微視的な大きさに物質を包みこむ微小な容器をいう。物質をマイクロカプセルに内包すること(マイクロカプセル化)の目的は,(1)液体を包みこむことによって粉体状にして取扱いを容易にしたり,(2)包みこんだ物質が徐々に放出されることを利用してその放出の仕方をコントロールしたり,(3)そのままでは互いに反応する物質をマイクロカプセル化して隔離したうえで混合し,必要に応じて反応させるようにしたり,(4)揮発しやすい物質を包みこんで揮発しないようにする,などである。用途としては,医薬品色素染料,食品,および食品添加物,接着剤洗剤,写真用薬品などに利用される。

 医薬品への利用は代表的な例の一つで,医薬品をマイクロカプセルに内包することによって,その放出を制御することをおもな目的としている。ふつう,医薬品を投与すると体内での濃度が増大するが,医薬品が体内で代謝を受けたりそのまま排出されたりするので,比較的短い時間のうちに濃度は低下してしまう。しかし,有効な治療のためには,長い時間にわたって一定の濃度が保たれることが望まれる。医薬品をマイクロカプセル化すると,マイクロカプセルを通じての拡散,放出やマイクロカプセルがゆっくりと分解することのために,この目的がある程度達せられる。何種類かの医薬品を同時に投与すると有効であるが,あらかじめ直接混合しておくことはできないような場合にも,マイクロカプセル化は有効である。

 感圧複写紙,すなわち筆記やタイプの際に加わる圧力によって複写をとる紙にも,マイクロカプセルが利用されている。これは,それぞれでは無色であるが混合すると互いに反応して発色するような2種類の化合物を利用するもので,一方の化合物をマイクロカプセル化し,複写の際上側に使う紙の裏面にぬってある。下側に使う紙の表面にはもう一方の化合物がぬってあり,圧力がかかるとマイクロカプセルがこわれ,その部分だけ反応が起こって発色する。

 マイクロカプセルの材料には,ゼラチン,カゼイン,アルブミンなどの水溶性タンパク質,アラビアゴム,寒天,アルギン酸ナトリウムセルロース誘導体などの炭水化物や,ポリエチレンスルホン酸,ビニル化合物無水フタル酸共重合体などの合成高分子が用いられる。この中でゼラチンは,安価であり,またマイクロカプセルの調製が便利にできるので,ひろく用いられている。

 マイクロカプセル化の方法にはいろいろあるが,化学的および物理化学的方法の例としては次のようなものがある。(1)相分離法 上記のような高分子物質水溶液が微視的に濃度の異なる2相に分離することを利用するもの。包みこむ物質をこの系に共存させ,濃度の高いほうの微小相にとりこませ沈殿させることによって,その物質を内包したマイクロカプセルを得る。(2)界面重合法 互いに混合しない2種の溶媒のそれぞれに,互いに反応して高分子を生成するような原料を溶かすと両溶媒の界面で反応が起こって高分子が生成することを利用するもの。内包させる物質をこのような系に共存させてはげしくかきまぜながら反応させると,かきまぜによって生じた微小な界面で高分子が生成する際,その物質がとりこまれてマイクロカプセルが得られる。
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化学辞典 第2版 「マイクロカプセル」の解説

マイクロカプセル
マイクロカプセル
microcapsule

医薬品,色素,香料などを包み込むための微小容器(約5~300 μm).すなわち,
(1)液体を見掛け上,固体にして粉体化する,
(2)揮発物質を不揮発化する,
(3)反応性物質を不活性化し反応成分どうしを混合する,
(4)物質粒子の表面を被膜化することにより内包物の放出をコントロールする,
などの目的に用いられる.使用例としては,感圧複写紙,医薬品(アスピリンのエチルセルロースカプセルによる時限粒(time pill)化),香料,オイルカプセル,繊維のポリエチレンカプセル,接着剤,色素カプセル,液晶物質カプセル,カプセル化肥料などがある.マイクロカプセル化法としては,化学的方法,物理化学的方法,および物理的方法に大別される.カプセル化の手順としては,
(1)カプセル化媒体中に芯(しん)物質を微粒子状に分散させ,
(2)この系に壁膜物質を導入し,
(3)なんらかの方法で壁膜物質を芯物質粒子の周囲に集合,沈積,包囲させてカプセル壁を形成する.さらに,
(4)カプセル壁はそのままでは不安定なので,物理的または化学的方法によって強化する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「マイクロカプセル」の意味・わかりやすい解説

マイクロカプセル

数μmから数百μm(1μmは1/1000mm)程度の微小容器。液体や揮発性物質や互いに化合してしまう物質を包み込み,粉状にしたり保護したりして使用しやすくする。事務用の感圧複写紙はマイクロカプセル利用の身近な例であるが,医薬品,色素,染料,食品,接着剤,洗剤,化粧品,写真フィルムなど,日常生活のなかで新しい機能を備えた製品のほとんどにマイクロカプセル化の技術が応用される。カプセルの材料にはゼラチン,アラビアゴムノリ他が目的によって利用される。カプセルは温度・圧力・酸などによって破れ必要なときに内容物が作用する。
→関連項目ノーカーボン紙

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マイクロカプセル」の意味・わかりやすい解説

マイクロカプセル
microcapsule

種々の物質を封じ込める径1~100μm程度の微小な容器。ゼラチン,ビニルなどの天然または合成高分子カプセルのほか,無機質カプセルも開発された。最初の商品は,紙に塗られた染料入りカプセルを筆圧で破壊して発色させる感圧複写紙である。医薬や農薬をカプセル化すると薬効がゆっくり効率的に持続する。熱膨張性マイクロカプセルは,感光剤に混入して塗布した盲人用立体コピー用紙や,塗料やセメントに混入して軽量化・弾性化するのに利用されている。磁性体や金属の超微粒子を混ぜた生体適合性高分子のマイクロカプセルで固定した薬剤は,機能性材料として医療に応用されている。

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栄養・生化学辞典 「マイクロカプセル」の解説

マイクロカプセル

 径が数mmから数百mmの微小な体積の容器で,薬剤用には消化管で溶けるゼラチンなどを用いて製造する.

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