マクスウェルの悪魔ともいう。多数の分子の集団の取扱いには統計的手法を用いることが必要で,また熱力学の第2法則は統計的な真理であることを主張するために,J.C.マクスウェルが《熱の理論》(1870)の中で導入した,ミクロな情報を識別して分離する仮想上の生物。一様な温度にある物質の中に自然に温度差が生ずることはないということは,熱力学の第2法則の根底となる経験的事実であるが,例えば,気体の入った箱の中央に小さな穴をあけて,そこで,分子の速度を識別して,速度の大きいものは一方向に通過させ,速度の小さいものは反対方向にのみ通過させる生物が存在したとすると,一方の気体の温度はどんどん上がり,他方の気体はどんどん温度が下がることになる。すなわち,第2種の永久機関が作れることになり,熱力学の第2法則は破れることになる。実際は,ミクロな情報を識別するには,ミクロな物質から構成されたミクロな生物でなければならず,それは熱運動によってゆらいでいて,上のようなつごうのよい一方向のみの操作は不可能であり,したがって,マクスウェルの魔物のようなものの存在はありえないものと考えられている。
執筆者:鈴木 増雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…ボルツマンはこの方法でマクスウェル=ボルツマン分布をJ.W.ギブズが正準分布と呼ぶものへと拡張したのであるが,マクスウェルが79年に取り上げるまで,この新方法も顧みられなかった。エルゴード理論
[マクスウェルの魔物]
マクスウェルは熱力学の第2法則は数学的真理ではなく統計的真理であるとした。このことに関連して彼は各分子の走路を追跡できる鋭い能力をもつ生物を想像する。…
※「マクスウェルの魔物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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