翻訳|mastodon
マンムト科に属する絶滅した長鼻類でゾウ型の哺乳類。マンムト科には中新世から更新世初期にユーラシア大陸に分布したジゴロフォドンZygolophodonと,鮮新世から現世にかけて北アメリカ大陸で繁栄したマンムトMammut(マストドンMastodon)の2属がおもなものとしてある。アメリカマストドンMammut americanusは肩の高さ2.7~3mと高く,頭は低くて長く,上顎に2~3mの長いきばをもち,体は30cmもある長い褐色の毛でおおわれ,低地の開けた針葉樹の多い森林地帯で生活していた。北アメリカでは9000年から1万2000年前の間に絶滅しているが,人類遺跡との関係は不明である。幅の広い臼歯には対になった乳房状の隆起が稜をつくっているのが特徴で,その形態からG.キュビエが,胸を意味するギリシア語のマストスと歯を意味するオドントスからこの名をつけた。しかし学名としてはそれ以前にJ.F.ブルーメンバハが命名したマンムトに先取権がある。この名はタタール語の〈大地に住むもの〉の意味のママントゥに由来する。広義にマストドンという場合は,現生のゾウのような一生歯性より古い,二生歯性のもの,つまり,第三紀に繁栄した多種多様の長鼻類を含むマストドン亜目Mastodontoideaのものを指す。この場合,現生のゾウのようなものをエレファス段階の長鼻類と呼び,それに対してこの二生歯性の長鼻類はマストドン段階のものとされる。頭が細長く,頭高が低く,胴長で四肢は短く,上下の顎に短いきば状の切歯または下顎にへら状の切歯が発達する森林生活者の〈ゾウ〉のことである。
→ゾウ
執筆者:亀井 節夫
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(2020-5-29)
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…メリテリウムは他の長鼻類との系統関係はなく,独立のメリテリウム亜目をつくる。 今日のゾウにつながる先祖は,マストドン亜目の長鼻類の中に求められるが,メリテリウムと同じくファユームで発見されたパレオマストドンPalaeomastodonとフィオミアPhiomiaがその中でもっとも古く,3500万年前の漸新世前期のものである。マストドン亜目のものは,頭骨が低く,胴が長く,四肢が短いことで,長鼻類の他のグループであるデイノテリウム亜目やゾウ亜目のものと区別され,上下のあごの切歯は左右それぞれきば状の1本を除いては退化し,犬歯は失われ,吻はのびている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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