日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
マンサール(François Mansart)
まんさーる
François Mansart
(1598―1666)
フランスの建築家。パリに生まれる。義兄のもとで修業したのちサロモン・ド・ブロッスに師事したといわれる。16世紀初頭のバロック様式に影響されるが、これを克服し、古典的モチーフをフランスのシャトー(城館)建築の伝統形式に調和させて、フランス古典主義建築の立役者となった。初期の傑作であるブロアのシャトーのガストン・オルレアン翼屋(1638)では、中央部の凱旋(がいせん)門モチーフなど古典様式を採用しながら、建築体の構成やプロポーションに明晰(めいせき)、簡潔、そして優雅といったフランス固有の感覚をよく生かしている。代表作とみなされるメゾン・シュル・セース(1651、現在のメゾン・ラフィット)の外観にはバロックの影響が否めないが、勾配(こうばい)の急な屋根や煙突の多用によってフランス建築の伝統様式が確保されている。
[濱谷勝也]