改訂新版 世界大百科事典 「マンネンロウ」の意味・わかりやすい解説
マンネンロウ
rosemary
Rosmarinus officinalis L.
ヨーロッパ,地中海沿岸地方原産のシソ科の小灌木。ローズマリーとも呼ばれる。丈は60~120cm,葉は3cmほどの細い革質で,両側が裏面に巻き込む。葉の裏面には綿毛が密生して灰色に見える。4~5月に淡紫色の唇形の花が咲く。葉から迷迭香油(めいてつこうゆ)と呼ばれる香油をとり,香料や香セッケンの材料とする。芳香成分はピネン,シネオール,竜脳,樟脳など。またハーブとして肉料理,野菜料理ともによくあい,スープ,シチュー,バーベキューソースに加える。ウースターソースの添香料の一つ。ヨーロッパでは,魔女の使う薬草の一つとして,黄疸の治療や堕胎に用いられた。また葉をかんで口臭を消す習慣がある。マンネンロウの花から採ったはちみつは最高級品とされ,南フランスの名産である。種まきは4月。挿木や根分けでも繁殖する。暖かい乾燥地によく生育する。日本には,文政年間(1818-30)のころ渡来した。
執筆者:星川 清親
語源,伝承
英名rosemaryはラテン語のros marinus(〈海の露〉の意)を語源とし,海岸の崖などから滴るように花をつけると考えられたことに由来するとされる。キリスト教伝説では,聖母マリアがエジプトへ逃れる途中,この茂みにイエス・キリストの衣を干したところ,元来は白かった花が青く染まったとも,33年かかってキリストと同じ背丈になった後は,それ以上伸びないともいう。防疫,不老,魂の不滅,とくに記憶の象徴とされ,古代ギリシアでは学徒が記憶力を増進させるために髪にさしたと伝えられる。女性が植えた場合にのみ繁茂するともいう。花言葉は〈貞節・誠実〉〈変わらぬ愛と記憶〉など。
執筆者:荒俣 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報