筋収縮に関与する筋肉細胞内の筋原繊維を構成する分子量4.8×105,長さ約150 nm の巨大構造タンパク質で,分子量2.2×105 のH鎖2本と分子量1.5×104 のL鎖4本からなる.アデノシン5′-三リン酸(ATP)の高エネルギーリン酸結合の加水分解反応を触媒するATPアーゼでもある.すりつぶした筋肉から抽出したミオシン溶液を0.6 mol L-1KCl溶液での溶解と希釈による沈殿操作を繰り返すことによって精製できる.2本の長いαヘリックス鎖の一端が非対称な二つの球状になっている分子で,トリプシン処理により鎖の中心付近で特異的にペプチド結合が切断されて,L-メロミオシン(light meromyosin)と二つの球状タンパク質を含むH-メロミオシン(heavy meromyosin)の2成分に分解される.ATPアーゼの触媒活性部位がミオシン1分子当たり二つあるが,これらの活性部位は二つの球状タンパク質にそれぞれ存在している.ATPアーゼ活性を阻害しているSH基と触媒活性に必要なSH基の2種類のSH基があるが,これらのSH基も二つの球状タンパク質にそれぞれ存在し,しかもこれらのSH基がアクチンとの結合にも深く関与している.ミオシンATPアーゼは Ca2+ により活性化され,pH 6.0と pH 9.5に至適 pH がある.しかし,アクチンと結合すると性質の異なるアクトミオシン型ATPアーゼにかわる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
筋肉を構成するタンパク質の一つ。筋繊維に含まれる筋原繊維を構成するタンパク質の約60%がミオシンであり,脊椎動物の骨格筋では長さ約1.5μ,太さ約150Åのミオシンフィラメント(これをAフィラメントという)を形成している。ミオシンは分子量約50万で,長さ約1500Åの棒状の部分と2個の頭部からなり,適当な条件下で自動的に集合してミオシンフィラメントを形成する性質がある。このとき,棒状の部分はフィラメントの軸を形成し,頭部は外に突き出して架橋となる。架橋はミオシンフィラメントにそって143Åおきに120度ずつずれて突出しており,それぞれミオシンフィラメントのまわりのアクチンフィラメント(これをIフィラメントという)と向き合っている。ミオシン分子の頭部はATPアーゼ活性をもち,筋肉の収縮はミオシンフィラメントの架橋がATPを分解しながらアクチンフィラメントと反応することによりおこると考えられる。
→アクチン →筋収縮
執筆者:杉 晴夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…すなわち生体は,常になんらかの物理的仕事に対するエネルギーの供給と共役したかたちでATPを分解するように造られており,ATPがむだに加水分解されることはない。たとえば筋肉の収縮タンパク質であるミオシンは機械的仕事と共役したATPアーゼの一つであり,反応過程におけるそれ自身の高次構造変化やアクチンとの相互作用などを通じて,ATPのエネルギーを筋収縮の仕事に変換する機能をもっている。一方,筋小胞体と呼ばれる筋肉の細胞器官の膜に大量に存在する別種のATPアーゼは,ATPの分解に先立って細胞質中のCa2+イオンを強く結合し,小胞体内のCa2+濃度が細胞質より高い場合でも,ATPの分解とともにそれを膜の内腔に輸送する性質を示す。…
…平滑筋の収縮は交感神経と副交感神経によって調節されており,一方が収縮を他方が弛緩をおこすが,そのしくみには不明な点が多い。
[脱分極と収縮との関係]
筋収縮は,筋フィラメントを形成するタンパク質アクチンとミオシン間の反応によるものであり,このエネルギー源はATPである(図2)。静止状態の筋肉では,アクチンとミオシン間の反応がトロポミオシンおよびトロポニンというタンパク質によって抑制されているので収縮はおこらない。…
※「ミオシン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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