日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミラー指数」の意味・わかりやすい解説
ミラー指数
みらーしすう
Miller indices
イギリスの鉱物学者W・H・ミラーが結晶面の記号として1839年に採用したもの。天然の鉱物結晶や実験室で溶液から成長させた結晶は、普通、平面によって囲まれた規則正しい多面体の外形をもつ。この外形に現れている平面を結晶面という。ミラー指数は面指数ともいい、各結晶面の種類を指定するための三つの整数(普通これらにh、k、lの文字をあてる)からなる指数である。各結晶面を括弧付きの記号(hkl)で表す。いま結晶を構成する最小単位である単位胞(たんいほう)(単位格子)は三つのベクトルa、b、cがつくる平行六面体であるが、このa、b、cに平行に3本の結晶軸を定める。この結晶軸の方向に座標軸x、y、zをとるとき(座標軸はかならずしも直交していない)、結晶面(hkl)は、各軸を原点からそれぞれ
X=a/h, Y=b/k, Z=c/l
の距離のところで切るような平面である。ただしa、b、cは定数で、比a:b:cが着目する結晶の種類に固有な値の比率(これをその結晶の軸率という)に相当する。結晶面の方位は比X:Y:Zによって、したがって比h:k:lによって決まる。結晶軸の負の部分で交わる面の指数は負となるが、-hはと書く。たとえば(h-kl)は(hl)で表す。また、ある結晶軸に平行な面は、その軸と無限遠で交わるとして、その指数は0とする。(110)とはx、y軸とa、bで交わりz軸とは平行な面である。h、k、lは公約数を含みうる。h、k、lを最大公約数で割った整数をh*、k*、l*とするとき、(hkl)と(h*k*l*)はお互いに平行な結晶面であるが、混乱を避けるため互いに素の整数h*、k*、l*をミラー指数(面指数)に選ぶことが多い。各結晶面はその結晶がもつ結晶格子(空間格子)の格子面に平行であり、格子面もまたミラー指数によって指定することができる。
[三宅静雄・石田興太郎]