モズク(読み)もずく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モズク」の意味・わかりやすい解説

モズク
もずく / 水雲
海蘊
[学] Nemacystus decipiens Kuckuck

褐藻植物、モズク科の海藻。体は粘質に富んできわめて柔らかく、暗褐色を呈する。分枝の多い糸状形で径1ミリメートル内外、体長は30センチメートルから1メートルほどとなるが、容量は小さい。外海に生育するホンダワラ類の体上に巻き付いて着生し、春から初夏にかけて繁茂する一年生藻。温海性のため、分布は東北地方以南のほとんどの沿岸と広いが、主産地は能登(のと)半島外海側、瀬戸内海の西側の諸島周辺などである。モズクと同様に三杯酢として食べるものにフトモズクTinocladia crassa、イシモズクSphaerotrichia divaricata、オキナワモズクCladosiphon okamuranusがある。これら3種はナガマツモ科の海藻で、いずれも径はモズクよりも太めである。なお、平安時代の『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』ではモズクに「毛都久」の字をあてている。

[新崎盛敏]

食品

春先の若い芽を採取し、多量の塩を加えた塩蔵品として市販されるが、近年は十分塩抜きし、三杯酢を添えて市場に出ているもののほうが多い。淡い茶褐色をしたものが新しく、黒っぽい茶色をしたものには香りの抜けたものがある。磯(いそ)の香りを楽しむ食品で、高血圧防止に効用ありという。塩蔵品は水で数回洗って塩抜きし、三杯酢で食べるが、上にウズラの卵をのせたり、針しょうがをかけると楽しい一品となる。もずく雑炊(ぞうすい)としても食べる。

[新崎盛敏]


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食の医学館 「モズク」の解説

モズク

《栄養と働き&調理のポイント》


 ほかの海藻に付着して成長することから「藻付(もづ)く」と呼ばれるようになりました。地方によっては、モゾコ、モクズ、ハナモズク、スノリと呼んだりします。
 現在は、ロープなどに付着させる養殖が一般で、2~3月に採取した若いものが味がよいとされています。保存性を高めるために塩蔵品が市場に出回りますが、生ものとくらべても栄養価はほとんどかわりません。
○栄養成分としての働き
 モズクの特徴は、なんといってもぬめり成分である多糖類のフコイダンです。これは、コレステロールを取り込んで排出したり、がん細胞に対して抵抗力を強める作用があるほか、動脈硬化や高血圧のリスクを下げます。
 また、がん細胞の活動を抑えるセレニウムもあります。モズクはセレニウムの働きを助けるビタミンEも含んでいるので、がん予防のダブル効果が期待できます。
 食物繊維も含むため、腸の運動を活発にさせて便秘(べんぴ)を改善します。ほかに鉄、マグネシウム、カロテンなども含んでいます。
 モズクは、酢のものや味噌汁などの具としても使いやすいのがよい点です。なかでも酢との組み合わせは、モズクの有効成分の吸収を助けるほか、身をやわらかくして消化をよくすることが知られています。

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改訂新版 世界大百科事典 「モズク」の意味・わかりやすい解説

モズク
Nemacystis decipiens (Suringar) Kuckuck

不規則に密に分枝をもつ柔らかい粘りけの多い糸状の褐藻で,食用となる。体は黄褐色または緑褐色で,低潮線付近の褐藻ツルモホンダワラ類の体上について生育し,長さ30~40cmになる。北海道南西部以南の日本各地沿岸,特に内湾に多く生育し,冬から初夏に繁茂する。食用には春に採取したものを使い,生のまま酢であえるか,または塩蔵として保存し,必要に応じて水洗して食用に供する。最近ではロープを使った人工養殖も行われる。近縁の海藻にフトモズクやオキナワモズクなどがあり,共に食用となる。
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百科事典マイペディア 「モズク」の意味・わかりやすい解説

モズク

褐藻類モズク科の海藻。北海道南部以南の沿岸に分布し,特に内湾に多い。春〜初夏によく生育,特に潮間帯下部のホンダワラ類に着生する。体は細く,密に枝分れし,黄褐色または緑褐色。柔らかく粘質に富む。生食または塩漬として保存し,生は湯通しし,塩漬は塩抜きして酢の物などにする。近縁にイシモズク,フトモズクなどがあり,いずれも食用。

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栄養・生化学辞典 「モズク」の解説

モズク

 [Nemacystis decipiens].褐藻綱ナガマツモ目モヅク属の海藻.食用にする.

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