改訂新版 世界大百科事典 「ツルモ」の意味・わかりやすい解説
ツルモ (蔓藻)
bootlace weed
sea twine
Chorda filum(L.) Stackh.
紐状,中空,無分枝の褐藻で,波の静かな入江などの低潮線下の小石や貝殻などについて生育する。太さは2~5mmで,長さは数mに及ぶものもある。体の内部にガスを充満するので,海中では直立し,低潮時には体の上部はしばしば水面に浮く。生活史はコンブ型で,体の表面に密に形成される単子囊内につくられる遊走子が,泳ぎ出して基物について発芽すると,顕微鏡的な糸状の配偶体となり,これに形成された精子と卵が受精すると,ふつうに見るツルモの体に発生する。すなわち,胞子体であるツルモの体と顕微鏡的な雌雄の配偶体の間で世代交代が行われる。褐藻綱コンブ目ツルモ科に所属し,広く世界各地の海に分布する。春から初夏に採取したものを乾燥し,〈干しつるも〉と呼んで保存し,後に水に浸して三杯酢などにして食用にする地方がある。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報