ヤマゴボウ(英語表記)Phytolacca esculenta van Houtte

改訂新版 世界大百科事典 「ヤマゴボウ」の意味・わかりやすい解説

ヤマゴボウ
Phytolacca esculenta van Houtte

中国北部,朝鮮原産で,栽培されるヤマゴボウ科の大型の多年草。根は塊状に肥大し,柔らかく太い茎と大きな全縁の葉をつける。茎は円柱形で分枝して広がり,高さ1.5mほどになる。葉は互生し,柔らかく,楕円形で長さ10~25cm,幅5~10cm。6月から9月にかけて,葉と対生の位置に直立する総状花序を作り,小さな白色の花を多数つける。花被は5枚。おしべは8本。めしべは輪状に並ぶ8個の離生心皮からなる。果実は8個の分果に分かれ,液質で熟すと黒紫色になる。根に多量の硝酸カリとアルカロイドのキナンコトキシンchynanchotoxinを含み,有毒植物であるが,漢方では商陸(しようりく)と呼び,利尿薬として使われる。葉は食用にされ,辛味があって美味であるが,多量に食べるのはよくない。和名山牛蒡の意味であるが,ヤマゴボウとよんで食用にされているアザミの根とは別物である。

 日本にはマルミノヤマゴボウP.japonicaMakinoが野生する。全体はヤマゴボウに似るが,花が淡紅白色で,果実は分果を作らず球形の1個の液果となる。ヨウシュヤマゴボウP.americana L.(英名poke,scoke,pokeweed,pokeberry,pigeonberry,garget)は北アメリカ原産で帰化し,雑草としてよく見られる。茎は赤みを帯び,花序は下垂し,おしべは10本。子房は完全に合着して10室からなる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤマゴボウ」の意味・わかりやすい解説

ヤマゴボウ
やまごぼう / 山牛蒡
[学] Phytolacca acinosa Roxb.
Phytolacca esculenta Van Houtte

ヤマゴボウ科(APG分類:ヤマゴボウ科)の多年草。全草無毛。茎は円柱形で肥厚し、高さ1.5メートルに達する。葉は互生し、楕円(だえん)形または卵状楕円形で、長さ10~20センチメートル、中央がもっとも広く、先端は急に鋭くとがる。夏から秋、枝から約15センチメートルの花茎を直立して、短い柄のある総状花序をつくり、白色花を密に開く。花は短い柄があり、花被片(かひへん)は5枚、卵形で先は丸い。雄しべは8本、葯(やく)は淡紅色。雌しべは淡緑色で、8個の心皮が輪状に並ぶ。果穂は直立し、液果は宿存萼(がく)をつけたまま黒紫色に熟し、8個の分果が輪状に並ぶ。種子黒色で1個。中国原産で、栽培される。名は、根がゴボウに似ることによる。根は漢方で利尿薬に用い、若葉は食用とする。根に毒を含む。山牛蒡とよんで食用にするのは本種とは別物で、キク科アザミ属のゴボウアザミモリアザミである。北アメリカ原産の近縁のヨウシュヤマゴボウに似るが、ヨウシュヤマゴボウは、花序が果実期に垂れ下がり、心皮が5個なので区別できる。ヤマゴボウ科の多くは熱帯に分布し、約17属約120種ある。

[小林純子 2021年2月17日]

 APG分類では世界に約5属33種がある。ヤマゴボウ科に含まれていたジュズサンゴ属などはAPG分類ではジュズサンゴ科として独立した。

[編集部 2021年2月17日]


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百科事典マイペディア 「ヤマゴボウ」の意味・わかりやすい解説

ヤマゴボウ

ヤマゴボウ科の多年草。日本全土,東アジアの温帯に分布し,人家付近にはえる。根は肥大し,円柱形。茎は太く,直立し,高さ1m内外となり,大型で楕円形の葉を互生する。6〜8月茎頂に長さ5〜12cmの総状花序が直立する。花は白色で径約8mm,花弁はなく,萼片(がくへん)は5枚。果実は扁球形の液果で黒紫色に熟し,果穂も直立する。果汁は紫色。有毒植物だが,葉は食用となる。近縁のヨウシュヤマゴボウは北米原産で,花穂や果穂は下垂する。市街地にはこの方がふつうに見られる。なお,ヤマゴボウの漬物として販売されているものは,モリアザミの根(アザミ)。

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栄養・生化学辞典 「ヤマゴボウ」の解説

ヤマゴボウ

 →ゴボウアザミ

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世界大百科事典(旧版)内のヤマゴボウの言及

【堕胎】より

…いうまでもなく非合法の場合も多かったので,川柳などによまれて諷刺の対象ともなっている。薬方は水銀を主としたらしいが,民間ではホオズキの根,ヤマゴボウの根,ハランの茎,ナンテンなど主として子宮に挿入する方法や,高所から飛びおりたり階段から落ちるなど機械的な方法が用いられた。薬品には強い下剤を飲んだり薬を挿入するなどの薬物使用,さらに神仏に祈願したり呪術にたよるなど,概して他人に知られずに目的を達しようとした。…

※「ヤマゴボウ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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