改訂新版 世界大百科事典 「ユズ」の意味・わかりやすい解説
ユズ (柚/柚子)
Citrus junos Sieb.ex Tanaka
ミカン科の常緑樹で,日本の代表的調味用かんきつ類。果面が粗いことから古くはオニタチバナと呼ばれた。中国名の〈柚〉は転訛(てんか)して現在はブンタンをさす。直立性でかなり大木になる。葉は小さく翼葉がある。花は単生で5弁花が5月に咲く。新芽,花はわずかに紫色を帯びる。果実は扁球形で100g前後。黄色で芳香がある。果肉は柔軟多汁だが,搾汁率は果実重の15~20%。酸味強く,約6%の酸を含み,その大部分はクエン酸である。糖分は2~3%。種子は丸みを帯び,白色で多胚。
中国原産。長江(揚子江)上流が原産地といわれる。イーチャンパペダC.ichangensis Swing.とマンダリンの雑種(イーチャンダリンichandarin)と推定されている。日本にはかなり古く,中国から朝鮮半島を経て渡来したといわれる。暑熱に弱いが耐寒性が強く,東北地方まで分布する。高知,徳島が主産県で,関東でも栽培される。中国,日本以外ではほとんど栽培されない。長い間実生繁殖されていたため,系統分離しており,枝梢のとげや種子(核)の有無で品種は大別される。とげなし,無核(少核)で大果のものが優良とされ,多田錦は大果で無核の代表品種である。また近縁種も多く,スダチ,カボス,ハナユ,キズ(木酢),ナオシチ(直七。別名タクマ(田熊)スダチ),ジャバラ,キヨオカダイダイ(清岡橙),ヘベス(平兵衛酢),ソボノカオリ(祖母の香り)などがある。
酸味と香りが日本料理に珍重される。皮は薄く切りとって汁物の吸口とし,せん切りにして焼物や煮物にのせ,あるいはおろし金でおろして,みそに加えてユズみそにつくる。果汁はダイダイ,スダチなどと同様,刺身のつけじょうゆに加えたりする。また,果肉をくり抜いて柚釜(ゆがま)として,中に酢の物やあえ物を詰め,あるいはゆべしをつくる。10月下旬ころの7~8分着色期の採収果が果汁が多い。2~5℃に貯蔵し,3月ごろまで出荷される。8~9月の未熟の緑色果も香り,酸を利用できる。完全着色は11月中下旬。寒さで落果しやすい。また,ふろに入れてユズ湯とし,とくに冬至のユズ湯に入ると,ひびやあかぎれを癒すとか,風邪をひかないといわれ,冬至にはこのための需要が多い。かんきつ類の大害虫であるヤノネカイガラムシの抵抗性因子をもつため,かんきつ類の育種上も利用価値が高い。実生はかんきつの台木になる。一般にユズを台木としたかんきつは,樹勢は強くなるが,果実の品質は少し低下する。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報