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ヨーロッパ通貨制度 ヨーロッパつうかせいどEuropean Monetary System; EMS

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ヨーロッパ通貨制度
ヨーロッパつうかせいど
European Monetary System; EMS

ヨーロッパ統合の進展に際し,金融通貨面での安定を図るための枠組み。 1979年3月から実施されており,公的ヨーロッパ通貨単位 ECUの創出,為替介入メカニズムおよび信用制度から成る。公的 ECUは EMS加盟国通貨を構成通貨として,それぞれの構成単位数が固定されているバスケット通貨であり,各国通貨当局間の決済手段として機能する。また EMSの為替介入メカニズムは,各国通貨の ECUに対する中心相場をもとに各通貨相互間すべてに基準相場を設定し,この基準相場の±2.25% (介入点) に達した場合には,両通貨国は無制限に介入する義務を負うものである。これを Exchange Rate Mechanism (ERM) という。この介入メカニズムを円滑に機能させるためヨーロッパ通貨協力基金 FECOMなどの信用制度を整備している。

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百科事典マイペディアの解説

ヨーロッパ通貨制度【ヨーロッパつうかせいど】

European Monetary Systemといい,略称EMS。1979年,ヨーロッパ経済共同体(EEC)加盟国がブレトン・ウッズ体制後の不安定な為替相場をにらみつつ,ヨーロッパの経済統合を通貨の面で完成させるため発足した制度。
→関連項目経済通貨同盟ヨーロッパ共同体ヨーロッパ経済共同体ヨーロッパ通貨協定

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世界大百科事典 第2版の解説

ヨーロッパつうかせいど【ヨーロッパ通貨制度 European Monetary System】

EMSと呼ぶことも多い。EC(ヨーロッパ共同体)諸国が通貨統合をめざして1979年に発足させた制度。
[背景]
1960年代後半において米ドルに対する信認がしだいに低下し,ドル不安が高まる中で,EC諸国の間にヨーロッパ通貨相互間の変動幅を縮小し安定的な通貨圏を設立すべきとの気運が高まり,69年に12月のヨーロッパ理事会において,漸進的な経済・通貨統合の創設につき基本的合意が成立した。これを具体化したウェルナー報告が70年10月に発表され,80年までに3段階に分けて経済・通貨同盟を達成することとされた。 この間ドル不安のいっそうの高まりから,国際金融情勢は緊迫し,1971年8月のニクソン・ショック,同年12月のスミソニアン合意後も不安定な状態が続いたため,ヨーロッパ理事会は72年3月,ウェルナー報告の提案の具体化として加盟国通貨相互間の為替変動幅を縮小させる措置を実施した。これは,先のスミソニアン合意で各国通貨の為替変動幅が対ドル中心相場(セントラル・レート)の上下各2.25%とされたのに対し,EC諸国通貨相互間の変動幅を上下あわせて2.25%とするもので,あたかも上下計4.5%の幅のトンネルの中を幅2.25%の管が蛇行していく形となるため,〈スネーク〉ないし〈トンネルの中の蛇〉と称された。

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大辞林 第三版の解説

ヨーロッパつうかせいど【ヨーロッパ通貨制度】

EC (ヨーロッパ共同体)内の通貨安定を図るため、1979年に発足した制度。 ECU (ヨーロッパ通貨単位)を定め、 EC 各国の通貨間にゆるい変動幅をもつ固定レートを設定。ヨーロッパ連合 成立にともない、経済・通貨統合の基礎的制度となる。 EMS 。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ヨーロッパ通貨制度
よーろっぱつうかせいど
European Monetary System

ヨーロッパ連合(EU)の前身であるヨーロッパ共同体(EC)が通貨同盟を完成させるために設けた中間的措置。略称EMS。ECは関税同盟、共同市場を実現し、経済統合の完成に向かって進んできたが、次の目標である通貨同盟は、EU加盟国通貨を統合し最終的にはヨーロッパ単一通貨制度を目ざすもので、これには各国の主権の部分的委譲という政治問題が絡むため、一挙には推進できない。そこでそれへの中間的措置として1979年3月に設立されたのがEMSである。
 EMS成立の基礎は、1973年2月のドルの再切下げを契機に誕生したECの共同フロート制(共同変動相場制)である。共同フロート制はドル危機の影響を緩和し、域内通貨の統合促進を目的としたが、しかしその後も通貨不安は収まらず、フランス・フランの離脱、復帰、再離脱やマルク、ギルダーの切上げなどが相次いだため通貨統合は進展しなかった。そこで西ドイツ(当時)とフランスとの間で折衝が進められ、78年7月のブレーメンにおけるヨーロッパ理事会でまとまった構想がEMSである。
 EMSは共同フロート制を継承したものであるから、域内固定レート制、域外変動レート制をとった。域内では各通貨は平価を固定し、為替(かわせ)レートはその上下各2.25%の幅で変動が認められた(1993年8月より上下各15%へ拡大)。これをパリティ・グリッドparity grid方式という。参加国通貨は共通の計算単位ECU(エキュ)で表示される。ECUの価値はEC加盟国の通貨による標準バスケット方式で決まるが、バスケットの構成比は定期的に点検される。為替レートが変動幅の限度に達した際には、関係中央銀行は市場介入によってレートの変動を抑えなければならない。このような参加国の安定義務を助けるために創設されたのが、ヨーロッパ通貨協力基金(EMCF)である。1991年末に合意されたEU条約(マーストリヒト条約)に沿って、99年1月にEU加盟国のうち11か国で単一通貨ユーロが決済通貨として使用され始めたことにより、EMSは98年末に発展的解消を遂げた。なお、2002年1月には当初の参加国にギリシアを加えた12か国でユーロ紙幣、ユーロ硬貨の流通が始まり、同年2月末までに各国通貨とのすべての切替え作業を終えた。[土屋六郎]
『島崎久弥著『ヨーロッパ通貨統合の展開』(1987・日本経済評論社) ▽島野卓爾著『欧州通貨統合の経済分析』(1996・有斐閣) ▽田中素香編著『EMS:欧州通貨制度――欧州通貨統合の焦点』(1996・有斐閣) ▽桜井錠治郎著『EU通貨統合――歩みと展望』最新版(1998・社会評論社) ▽嘉治佐保子著『国際通貨体制の経済学――ユーロ・アジア・日本』(2004・日本経済新聞社)』

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世界大百科事典内のヨーロッパ通貨制度の言及

【固定為替相場制】より

…近隣諸国との間で安定した為替相場で貿易取引を行う一方,投機的資本移動により国内金融情勢が攪乱(かくらん)されるのを防止する目的で,第2次大戦後若干の欧州諸国が採用していたことがある。 なお,複数の国が通貨同盟を構成し,域内では固定相場制を,域外通貨に対して変動相場制を採用することもあり,ヨーロッパ通貨制度(EMS)はその好例である(〈共同フロート〉の項参照)。為替相場【天野 明弘】。…

【通貨同盟】より

…この政治的動機は上記の経済的理由と矛盾するものではない。関税同盟および基幹産業の共同体から出発したECは究極には政治同盟をもめざしているが,その目標へさらに一歩近づくためにヨーロッパ通貨制度(EMS)という通貨同盟を1979年に発足させた。この制度はEC各国の通貨とならんでヨーロッパ通貨単位(ECU)をもち,共同フロートという形で加盟国の通貨の為替相場の変動幅を上下各2.25%以内に抑制している。…

【ヨーロッパ共同体】より

… ECは,68年7月までに関税同盟を完成し,共通農業政策を遂行し,70年代以降は共通通商政策を,さらに外交主権は構成国に残しながらも外交政策を調整するメカニズムとしてヨーロッパ政治協力(EPC)を開始した。通貨協力の面では,71年から経済通貨同盟(EMU)によって為替相場の安定に努めたが,国際通貨体制の動揺と2度にわたる石油危機で,79年3月に誕生したヨーロッパ通貨制度(EMS)に移行した。 87年7月に発効した単一ヨーロッパ議定書(SEA)は,ECの政策領域を明確にするとともに拡張した。…

※「ヨーロッパ通貨制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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